©︎ 石田衣良/集英社 2017映画『娼年』製作委員会 2018年に公開され、その過激な性描写と深く胸を打つ人間ドラマで大きな話題を呼んだ映画『娼年』。石田衣良の同名小説を原作に、演劇界の鬼才・三浦大輔監督がメガホンを取り、主演の松坂桃李が全身全霊で「娼夫」という生き様を演じ切った衝撃作です。単なる官能映画の枠を超え、人が人を求めることの根源的な意味や、欲望の裏側に潜む孤独と救済を描き出した本作は...

2018年に公開され、その過激な性描写と深く胸を打つ人間ドラマで大きな話題を呼んだ映画『娼年』。石田衣良の同名小説を原作に、演劇界の鬼才・三浦大輔監督がメガホンを取り、主演の松坂桃李が全身全霊で「娼夫」という生き様を演じ切った衝撃作です。単なる官能映画の枠を超え、人が人を求めることの根源的な意味や、欲望の裏側に潜む孤独と救済を描き出した本作は、R18+指定ながら女性客を中心に異例の大ヒットを記録しました。
本記事では、映画『娼年』のキャスト詳細や相関図、そして物語の結末に至るまでのあらすじを、ネタバレありで徹底的に解説します。なぜこれほどまでに多くの人々の心を揺さぶったのか、その理由を紐解いていきましょう。
記事のポイント
- 検索キーワード「娼年 キャスト 相関図」を軸に、複雑な人間関係と物語の全貌を詳細解説
- 松坂桃李、真飛聖、冨手麻妙らキャスト陣の体当たり演技と、それぞれの役柄の背景を深掘り
- 主人公・森中領が「娼夫」として成長していく過程と、各女性客とのエピソードを網羅
- 御堂静香の秘密や母の死の真相など、物語の核心に触れるネタバレ情報を完全収録
- 舞台版と映画版の違いや、ロケ地情報、視聴者の感想・評価まで多角的に紹介
【映画】『娼年』キャスト・相関図・あらすじをネタバレ

ポイント
- 映画『娼年』の公開情報・スタッフ・原作の概要
- 松坂桃李をはじめとする主要キャストのプロフィールと役どころ
- ボーイズクラブ「パッション」を中心とした登場人物の相関図
- 退屈な大学生だった領が娼夫になるまでの導入あらすじ
- 最終回の結末までを含む、詳細な物語の展開とネタバレ
『娼年』とは?公開日・製作陣・原作(石田衣良)の基本情報
映画『娼年』は、2018年4月6日に全国公開された日本映画です。原作は、2001年に直木賞候補にもなった石田衣良の恋愛小説『娼年』。都会的で洗練された文体の中に、人間の性愛と孤独を鋭く描き出す石田衣良の代表作の一つです。
本作の映画化にあたっては、2016年に同原作を舞台化した三浦大輔が監督・脚本を務めました。三浦大輔といえば、演劇ユニット「ポツドール」を主宰し、人間のリアルな生態や欲望を容赦なく暴き出す作風で知られるクリエイターです。舞台版『娼年』は、松坂桃李が主演を務め、チケットが即完売するなど伝説的な公演となりました。その熱狂冷めやらぬまま、同じ監督・主演のタッグで映画化が実現したのです。
映画版はR18+指定を受けています。これは、性行為の描写が極めて具体的かつ長時間にわたって描かれているためですが、決して興味本位なだけのものではありません。すべての濡れ場には明確な感情の流れとドラマがあり、登場人物たちが言葉ではなく身体で対話する重要なシーンとして機能しています。音楽は半野喜弘が担当し、ジャズを基調とした官能的でメランコリックな旋律が、映像の世界観をより一層深めています。
主要キャスト一覧:森中領(松坂桃李)/御堂静香(真飛聖)ほか
本作を彩るキャスト陣は、主演の松坂桃李をはじめ、実力派俳優たちが集結しています。それぞれの役柄について詳しく見ていきましょう。
森中領(リョウ)/演:松坂桃李
本作の主人公。東京の名門大学に通う20歳の大学生ですが、日々の生活や女性との関係にどこか退屈し、無気力な毎日を送っていました。バーでのアルバイト中に出会った御堂静香に誘われ、会員制ボーイズクラブ「パッション」で「娼夫」として働くことになります。
松坂桃李は、この難役に挑むにあたり「精神的に追い込まれる現場だった」と語るほど、心身ともに役になりきっています。冒頭の空虚な表情から、数々の女性と体を重ねることで人間の深淵に触れ、次第に顔つきが変わっていく様は圧巻です。文字通り「一皮むけた」男の顔へと変化していく成長のグラデーションを、繊細かつ大胆に演じています。
御堂静香/演:真飛聖
会員制ボーイズクラブ「Le Club Passion(ル・クラブ・パッション)」のオーナー。領の大学の同級生である進也に連れられて領の働くバーを訪れ、彼に娼夫としての才能を見出します。美しく知的で、どこかミステリアスな雰囲気を漂わせる女性ですが、心の奥底には誰にも言えない孤独と秘密を抱えています。
演じる真飛聖は元宝塚歌劇団花組トップスター。その凛とした佇まいと圧倒的な包容力は、若き娼夫たちを束ねる「マダム」としての説得力に満ちています。領にとっての憧れの対象であり、母親のような存在でもある静香を、慈愛と哀愁を込めて演じました。
御堂咲良/演:冨手麻妙
静香の娘。映画版では「耳が聞こえない」という設定が加えられており、そのことが彼女のキャラクターに独特の透明感と孤独な影を落としています。領の「入店試験」の相手を務めることになり、彼の娼夫としての第一歩を決定づける重要な存在です。
冨手麻妙は、元AKB48研究生という経歴を持ちながら、園子温作品などで鍛え上げられた体当たりの演技で知られる女優です。本作でも、言葉を発することなく表情と身体表現だけで感情の機微を伝え、観る者の心を掴みます。
平戸東(アズマ)/演:猪塚健太
「パッション」におけるNo.1娼夫。端正な顔立ちと完璧なテクニックで多くの顧客を抱えていますが、内面には歪んだ欲望と深い闇を抱えています。領の才能をいち早く認めつつも、彼に対して複雑な感情を抱き、ある倒錯した要求を突きつけます。
猪塚健太は、舞台版から同役を続投。映画化にあたり肉体改造を行い、より研ぎ澄まされた「アズマ」を作り上げました。狂気と純粋さが同居する危ういキャラクターを怪演しています。
白崎恵/演:桜井ユキ
領の大学の同級生。領に対して密かに好意を抱いていますが、その想いをうまく伝えられずにいます。領が娼夫になったことを知り、葛藤の末に「客」として彼を買うことを決意します。
桜井ユキは、遅咲きのブレイクを果たした実力派。恵の抱える「普通の恋心」と、それが叶わない切なさ、そして金銭を介してしか繋がれない惨めさと快楽がない交ぜになった複雑な女心をリアルに体現しています。
泉川夫婦/演:西岡徳馬・佐々木心音
「パッション」の顧客である泉川(西岡徳馬)と、その若き妻・紀子(佐々木心音)。夫公認で若い男を買い、夫はその様子を撮影して興奮するという、歪んだ性愛の形を持つ夫婦です。
ベテラン西岡徳馬の怪演と、佐々木心音の体当たりの濡れ場は、本作の中でも特に異質で強烈なインパクトを残すエピソードとなっています。
老女/演:江波杏子
領を指名する謎の老婦人。性的な行為そのものよりも、領の若さと生命力に触れ、自身の過ぎ去った日々を慈しむような時間を求めます。
2018年に逝去した名女優・江波杏子の遺作の一つとなりました。その神々しいまでの存在感と、人生の黄昏を感じさせる演技は、本作に深い奥行きを与えています。
【相関図】ボーイズクラブ「パッション」を取り巻く人間関係
物語の中心となるのは、会員制ボーイズクラブ「Le Club Passion」です。ここを舞台に、娼夫たちと女性客(オーナー含む)の複雑な欲望が交錯します。
- 森中領(リョウ) ⇔ 御堂静香
- スカウト/オーナー: 静香は領の才能を見抜き、スカウトする。領は静香の美しさと知性に惹かれ、次第に特別な感情(憧れ、あるいは母性への思慕)を抱くようになる。
- 森中領 ⇔ 御堂咲良
- 試験相手/同志: 最初の入店試験の相手。咲良は領の優しさに触れ、彼を受け入れる。後にクラブ再建のパートナーとなる。
- 森中領 ⇔ 平戸東(アズマ)
- ライバル/共鳴: アズマはNo.1娼夫として君臨。領の出現により、自身の抱える闇(痛みへの執着)を共有できる相手として彼を求める。
- 森中領 ⇔ 白崎恵
- 同級生/客: 友人の関係だったが、恵が客として来店したことで関係が歪む。恵の一方的な片思いが、娼夫と客という関係で成就(?)する皮肉。
- 森中領 ⇔ 田嶋進也
- 友人/紹介者: ホストクラブで働く領の中学時代の同級生。静香を領に紹介した張本人。自身も後に「パッション」で働くことになる。
- 森中領 ⇔ 顧客たち(老女、イツキ、ヒロミ、紀子など)
- 娼夫/客: 金銭契約に基づき、肉体と精神の奉仕を行う。領は彼女たちの欲望を受け入れることで、自身の空虚な心を埋めていく。
【起】あらすじ:無気力な大学生・領と「娼夫」の仕事との出会い
東京の大学に通う森中領は、日々の生活に退屈していました。バーでのアルバイト中も、女性との行きずりの関係にも、心の底からの充足を感じることはありません。彼の心には常に、幼い頃に亡くした母の不在という大きな穴が開いていたのです。
ある日、中学の同級生でホストをしている田嶋進也が、一人の美しい女性を店に連れてきます。彼女の名は御堂静香。「女なんてつまんないよ」と冷めた言葉を吐く領に対し、静香は興味深そうな視線を向け、「情熱の試験を受けてみない?」と誘います。彼女は、女性専用の会員制ボーイズクラブ「Le Club Passion」のオーナーだったのです。
提示された報酬と、静香という女性への興味から、領は指定されたマンションを訪れます。そこには静香と、彼女の娘である咲良が待っていました。試験の内容は、咲良を相手にセックスをし、彼女を満足させること。
領は戸惑いながらも行為に及びますが、静香の評価は冷ややかなものでした。「あなたは自分勝手。相手の悦びを考えていない」。不合格を言い渡され、わずかな謝礼を渡されて帰されそうになります。しかし、耳の聞こえない咲良が、領の優しさを感じ取ったのか、自分の財布から追加のお金を出し、彼を合格にするよう母に懇願します。こうして領は、ギリギリの状態で「娼夫・リョウ」としてのキャリアをスタートさせることになったのです。
【承】あらすじ:様々な女性客(老女・同級生)との濃密な時間
「パッション」に入店したリョウは、次々と訪れる女性客たちの相手をすることになります。彼女たちが抱える欲望は千差万別で、リョウはその一つ一つに戸惑いながらも、真摯に向き合っていきます。
キャリアウーマン・イツキ(馬渕英里何)
最初の客の一人。仕事に疲れ、癒やしを求める彼女に対し、リョウはぎこちなくも丁寧なセックスで応えます。彼女が涙を流して絶頂に達したとき、リョウはセックスが単なる快楽の追求ではなく、心の解放や救済になり得ることを肌で感じ始めます。
老女(江波杏子)
リョウの元に、一人の老婦人から指名が入ります。彼女は行為そのものよりも、リョウの若々しい肉体に触れ、彼と話をすることを望みました。かつて愛した男の話、過ぎ去った青春の日々。リョウは彼女の皺の刻まれた体を優しく抱きしめ、彼女の中にある「女」を敬意を持って愛します。この経験は、リョウにとって「娼夫」という仕事の奥深さを知る大きな転機となりました。
泉川紀子(佐々木心音)と夫
異様な依頼も舞い込みます。夫・泉川が見ている前で、妻・紀子を抱いてほしいというのです。夫はビデオカメラを回し、妻が他の男に乱される姿を見て興奮します。リョウは彼らの歪んだ欲望の道具となり、演じるように激しく紀子を求めます。そこにあるのは愛ではありませんが、確実に存在する夫婦の絆と性癖の形でした。リョウは嫌悪感を超え、人間の業の深さを垣間見ます。
同級生・恵(桜井ユキ)
リョウが大学に行かなくなったことを心配した恵は、彼が娼夫をしていることを突き止めます。リョウを軽蔑し、辞めさせようとしますが、リョウは「今の自分にはこれしかない」と拒絶。すると恵は、なんと客として店を訪れます。「お金を払えばいいんでしょ」と投げやりに振る舞う恵ですが、その本心はリョウへの断ち切れない想いでした。リョウは恵の心の痛みを受け止め、複雑な感情を抱えたまま彼女を抱きます。行為の後、二人の関係は以前とは決定的に変わってしまいますが、恵もまた、何かを吹っ切ったように去っていきます。
【転】あらすじ:No.1娼夫アズマとの対峙と母へのトラウマ
順調に指名を増やし、店での地位を確立していくリョウ。しかし、そんな彼を静かに見つめる男がいました。No.1娼夫のアズマです。アズマはリョウの中に、自分と同じ「欠落」のようなものを感じ取っていました。
ある日、アズマはリョウを食事に誘い、自分の秘密を打ち明けます。アズマは、痛みでしか性的快感を得られない特殊な性癖(マゾヒズムの変種)を持っていました。「僕の中で配線がこんがらがっているんだ」。アズマはリョウに、客として自分を抱いてほしい、そしてその最中にナイフで自分を傷つけてほしいと懇願します。
リョウはその異常な要求に戦慄しますが、アズマの切実な孤独を無視できず、これを受け入れます。血と痛みが交錯する壮絶な行為の果てに、アズマは恍惚の表情を浮かべ、リョウもまた、タブーを超えた先にある人間存在の極限に触れます。
一方、リョウの心の中で静香への想いは日増しに強くなっていました。彼女の知性、強さ、そして時折見せる脆さ。それは、リョウが幼い頃に亡くした母の面影と重なっていました。リョウはついに静香に告白し、彼女を求めます。しかし、静香は頑なにそれを拒絶します。「私はあなたを抱けない」。その拒絶の裏には、あまりにも残酷な事実が隠されていたのです。
【結】あらすじネタバレ:御堂静香の秘密とクラブのその後
静香の拒絶に傷つくリョウでしたが、事態は急変します。「パッション」が警察の摘発を受けたのです。静香は逮捕され、クラブは解散を余儀なくされます。
逮捕される直前、静香はリョウにある手紙を託していました。そこには、彼女がひた隠しにしてきた真実が綴られていました。
静香はかつて、自身も娼婦として働いていたこと。その過程でHIV(エイズウイルス)に感染してしまったこと。だからこそ、愛するリョウを抱くことはできなかったのだと。
そして、さらに衝撃的な事実が明かされます。リョウの母もまた、かつて娼婦をしており、幼いリョウを残して死んだあの日も、仕事の帰りだったというのです。静香はリョウの母のことを知っており、リョウの中に母の面影を見ていたのでした。
手紙を読んだリョウは、慟哭します。母が自分を捨てたわけではなかったこと、静香が自分を愛ゆえに突き放したこと。すべての点と点が繋がり、リョウの心にあった母へのわだかまりと、愛への飢渇が氷解していきます。
時は流れ、リョウは再び街に立っていました。静香は不在ですが、リョウは咲良と共に新たな形で「クラブ」を再建しようとしていました。法を犯すことなく、しかし人々の孤独に寄り添う場所として。
ラストシーン、リョウは柔らかな光の中で微笑んでいます。それは、かつての退屈そうな少年の顔ではありません。人の欲望のすべてを受け入れ、清濁併せ呑んで生きていく、一人の成熟した「娼夫」の顔でした。彼はこれからも、数え切れない女性たちの孤独な魂を、その身一つで慰め続けていくのでしょう。
脇を固めるキャスト:咲良(冨手麻妙)・恵(桜井ユキ)の役どころ
咲良の静かなる強さ
冨手麻妙演じる咲良は、劇中で一言も発しませんが、その存在感は物語の要石となっています。母・静香の逮捕後、彼女は絶望することなく、リョウと共に前を向くことを選びます。聴覚障害というハンディキャップを持ちながらも、人の心の声を誰よりも鋭く聞き取る彼女は、リョウにとって唯一無二のパートナーとなります。
恵のその後
桜井ユキ演じる恵は、リョウとの行為を経て、憑き物が落ちたように変化します。彼女のエピソードは、観客である私たちに最も近い視点を提供してくれます。「好きな人が娼夫になった」という受け入れがたい現実と向き合い、それを乗り越えることで、彼女もまた大人へと成長したのです。
【映画】『娼年』キャスト・相関図・あらすじをネタバレしたら

ポイント
- 映画版独自の改変点と舞台版からの変更要素
- R18+指定がもたらした表現の自由度と芸術性
- 主演・松坂桃李が語る撮影の過酷さと覚悟
- 印象的なシーンを彩ったロケ地情報の詳細
- 作品に対する賛否両論の感想と視聴方法まとめ
映画版と原作・舞台版の違いや変更点は?
『娼年』は原作小説、舞台、映画とメディアミックスされていますが、それぞれに異なる特徴があります。
最大の違いは、やはり咲良の設定です。原作や舞台版では咲良(佐津川愛美が演じた)には聴覚障害の設定はありませんでしたが、映画版では冨手麻妙が演じる咲良にこの設定が付与されました。これにより、言葉を介さないコミュニケーション=セックスというテーマがより強調され、静謐な世界観が醸成されました。
また、アズマの自傷行為の描写も異なります。舞台版では、観客席からの視認性を考慮し、アイスピックのようなものを使って胸を切り裂く「フリ」をする(あるいは血糊を使った演出)という形でしたが、映画版では映像ならではのリアリティを追求し、カミソリ(または鋭利なナイフ)を用いて実際に皮膚を切り裂くような、痛々しくも鮮烈な描写となっています。
さらに、結末のニュアンスも媒体によって微妙に異なります。映画版では、静香の逮捕という現実は重くのしかかりますが、ラストのリョウと咲良の姿には、原作以上に希望と再生の光が強く当てられているように感じられます。
なぜR18+指定?過激な性描写と芸術性の評価
本作がR18+指定(18歳未満観覧禁止)となった理由は明白です。性器の露出こそぼかし処理されていますが、性行為の描写があまりにもリアルで、かつ多岐にわたっているからです。オナニー、フェラチオ、正常位、騎乗位、バック、そしてSM的な行為まで、ありとあらゆる性愛の形が登場します。
しかし、批評家や観客から高く評価されたのは、それらが「ポルノ」として消費されるための映像ではない点です。三浦大輔監督は、濡れ場のシーンにおいても綿密なコンテを用意し、俳優の吐息一つ、視線の動き一つまで演出しました。その結果、セックスシーンが単なるアクションではなく、キャラクターの感情が最も激しく動く「会話シーン」として成立しているのです。この「エロティックでありながら哲学的」なバランスこそが、『娼年』が芸術作品として評価される所以です。
松坂桃李の演技・覚悟と「娼夫」としてのリアリティ
当時、NHKの朝ドラ『わろてんか』に出演し、「好青年」のイメージが強かった松坂桃李が、この過激な役に挑んだことは芸能界に衝撃を与えました。松坂自身、インタビューで「マネージャーから止められるかと思ったが、どうしてもやりたかった」と語っています。
彼は役作りのために減量し、娼夫としてのしなやかな肉体を作り上げました。また、撮影現場では「常に微熱があるような状態」を保ち、リョウという役から抜け出さないようにしていたといいます。特にアズマとのシーンや、江波杏子とのシーンでは、相手役の熱量に呼応し、憑依的な演技を見せました。
この作品を経て、松坂桃李は『孤狼の血』や『新聞記者』など、重厚な社会派作品や難役に次々と挑戦するようになり、日本を代表する実力派俳優としての地位を不動のものにしました。『娼年』は彼にとって、俳優人生の大きなターニングポイントとなった作品と言えるでしょう。
ロケ地・撮影秘話と三浦大輔監督の演出意図
映画の空気感を決定づけているロケ地の一つが、千葉県柏市にあるホテルブルージュです。クラシックで重厚な内装を持つこのホテルは、劇中の重要なシーンで使用され、非日常的な「性」の儀式の場として機能しました。
また、リョウたちが歩く渋谷や新宿の雑踏も印象的です。煌びやかなネオンと、行き交う人々の孤独。都会の喧騒の中にポツンと存在する「パッション」という異空間の対比が、映像美として表現されています。
三浦監督の演出は、長回しを多用することが特徴です。カットを割らずに一連の行為を撮り続けることで、俳優たちの嘘のない生理的な反応や、時間の経過による感情の移ろいを逃さず捉えています。撮影現場は極限の緊張感に包まれており、キャスト全員が「戦友」のような絆で結ばれていたというエピソードも残っています。
視聴者の感想・レビュー・評判(賛否両論のポイント)
公開当時、SNSやレビューサイトでは様々な意見が飛び交いました。
肯定的な意見
- 「松坂桃李の美しさと色気に圧倒された。いやらしさよりも切なさが勝る。」
- 「女性の欲望をここまで肯定的に描いてくれた映画は初めて。」
- 「ラストシーンで涙が止まらなかった。これは究極の純愛映画だ。」
- 「江波杏子さんのシーンが美しすぎて、神々しささえ感じた。」
否定的な意見
- 「性描写が過激すぎて直視できなかった。物語が入ってこない。」
- 「母親のエピソードやオチが少し出来すぎているように感じた。」
- 「男性の理想化されたファンタジーではないかという違和感もあった。」
賛否両論あることは、この映画が観る者の倫理観や性愛観を深く揺さぶった証拠でもあります。特に女性客からは、「自分の奥底にある欲望を許された気がした」という共感の声が多く寄せられました。
動画配信サービス(VOD)やDVD・レンタル情報
2025年現在、映画『娼年』は以下の方法で視聴可能です。
- DVD・Blu-ray: 豪華版にはメイキング映像や舞台挨拶の模様も収録されており、ファン必見の内容となっています。
- 動画配信サービス: Amazon Prime Video、U-NEXT、Huluなどで配信されています(時期により配信状況が異なるため、要確認)。特にU-NEXTなどの見放題サービスでは、手軽に視聴することができますが、R18+作品であるため、年齢認証が必要となる場合があります。
【映画】『娼年』キャスト・相関図・あらすじのネタバレまとめ
- 映画『娼年』は、石田衣良の小説を原作に、三浦大輔監督・松坂桃李主演で2018年に公開された。
- R18+指定を受けるほどの過激な性描写があるが、その本質は人間の孤独と再生を描くヒューマンドラマ。
- 主人公・森中領(リョウ)は、退屈な大学生から「娼夫」へと転身し、女性たちの欲望を受け止める。
- オーナーの御堂静香(真飛聖)に導かれ、領は「性」を通じて人間として成長していく。
- キャストには松坂桃李のほか、真飛聖、冨手麻妙、猪塚健太、桜井ユキら実力派が名を連ねる。
- 相関図は「パッション」を中心に展開し、客と娼夫、母と子、男と女の複雑な関係が描かれる。
- あらすじ前半は、様々な事情を抱えた女性客(老女、主婦、同級生など)とのエピソードがオムニバス的に続く。
- No.1娼夫アズマとの関係では、痛みと快楽が表裏一体となった倒錯した世界が描かれる。
- リョウは静香に母の面影を重ねて愛するが、静香はHIV感染の事実と、リョウの母も娼婦だった過去を隠していた。
- ラストは静香が逮捕され、リョウが咲良と共にクラブを再建する姿で幕を閉じる。
- 映画版独自の設定として、咲良が聴覚障害者となっており、非言語コミュニケーションの重要性が強調されている。
- 松坂桃李はこの作品で一皮むけ、その後の俳優キャリアを大きく飛躍させた。
- ロケ地にはホテルブルージュなどが使用され、独特の耽美な世界観を作り上げている。
- 公開当時は女性限定の応援上映が行われるなど、女性層からの熱狂的な支持を集めた。
- 「性」を単なる快楽ではなく、他者との繋がりや自己肯定の手段として描いた点が画期的だった。
- 賛否両論あるものの、観た後に誰かと語り合いたくなる、強い引力を持った作品である。
- 現在もDVDや配信サービスで視聴可能であり、新たなファンを獲得し続けている。
- 人間の心の闇と光をここまで赤裸々に描いた作品は稀有であり、日本映画史に残る衝撃作の一つと言える。
締めの一言
映画『娼年』は、観る人のコンディションや人生経験によって、全く違った表情を見せる鏡のような作品です。ある時は官能的に、ある時は痛々しく、そしてある時は涙が出るほど温かく。松坂桃李演じるリョウが、スクリーンの中からあなたに「それでいいんだよ」と語りかけてくるような、不思議な受容体験がそこにはあります。もしあなたが、誰にも言えない孤独や欲望を抱えているなら、ぜひ一度、秘密のクラブ「パッション」の扉を叩いてみてください。そこにはきっと、あなただけの「娼年」が待っているはずです。
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