
「白い巨塔」と検索しても、思い浮かべる顔は人によって違います。田宮二郎さんの鬼気迫る財前五郎を覚えている人もいれば、唐沢寿明さんの「財前教授の総回診です」が忘れられない人、岡田准一さんが演じた令和の財前で作品を知った人もいるでしょう。
『白い巨塔』は、山崎豊子さんが1963年から『サンデー毎日』に連載した長編小説です。大阪の浪速大学医学部を舞台に、野心家の外科医・財前五郎と、患者のために研究を続ける内科医・里見脩二という対照的な2人の医師を軸に、教授選の派閥工作と、ひとりの患者の死をめぐる医療裁判を描きます。映画化とテレビドラマ化を何度も重ね、医療ドラマの原点とも呼ばれてきました。
この記事では、検索されることの多い1978年版・2003年版・2019年版の3作を中心に、版ごとのキャストと相関図を比較し、あらすじと結末、原作との関係までを整理します。結末のネタバレを含むので、未見の方は注意してください。
- 原作は山崎豊子さんの長編小説で、新潮文庫版は全5巻
- 主な映像化は1978年版(田宮二郎)、2003年版(唐沢寿明)、2019年版(岡田准一)
- 財前五郎と里見脩二の対立に、教授選と医療裁判が絡む構図はどの版も共通
- 2003年版はフジテレビで全21話、最終回の視聴率は32.1%(関東地区)
- 2019年版はテレビ朝日開局60周年記念の5夜連続ドラマで、設定を2019年に置き換えた
- 財前の病名は原作が胃がん、2003年版が肺がん、2019年版が膵臓がんと版ごとに違う
『白い巨塔』キャスト・相関図とあらすじの前提|1978年版・2003年版・2019年版を比較

まずは、どの版を探しているのかを整理しましょう。同じ役でも、版によって俳優も時代設定も大きく変わります。
- 主な映像化は1966年の映画と、1967年・1978年・1990年・2003年・2019年のテレビドラマ
- 1978年版は全31話、2003年版は全21話、2019年版は5夜連続の特別ドラマ
- 2003年版と2019年版は、原作の昭和30年代の設定を放送当時の現代に移している
- 相関図の中心は、財前五郎と里見脩二という同期の医師2人
- 財前派・東派・鵜飼派の対立と、医療裁判の原告・被告が人物関係の軸になる
映像化作品の一覧
『白い巨塔』の主な映像化作品は次のとおりです。
- 1966年:映画(大映、主演・田宮二郎)
- 1967年:テレビドラマ(NETテレビ、現・テレビ朝日)
- 1978年:テレビドラマ(フジテレビ「土曜劇場」、主演・田宮二郎、全31話)
- 1990年:テレビドラマ(テレビ朝日、主演・村上弘明)
- 2003年:テレビドラマ(フジテレビ「木曜劇場」、主演・唐沢寿明、全21話)
- 2019年:テレビドラマ(テレビ朝日、主演・岡田准一、5夜連続)
1978年版は1978年6月3日から1979年1月6日まで放送されました。財前を演じた田宮二郎さんは1966年の映画版でも財前を演じており、本作は当たり役でした。しかし放送が2話分残っていた1978年12月28日に亡くなり、その後に放送された最終話「終章」は関東地区で31.4%の視聴率を記録しています。
2003年版は、フジテレビの「木曜劇場」で第一部(2003年10月9日〜12月11日)と第二部(2004年1月8日〜3月18日)に分けて全21話が放送されました。脚本は井上由美子さん、音楽は加古隆さん。関東地区の平均視聴率は23.9%、最終回は32.1%に達しました。
2019年版は、テレビ朝日開局60周年記念として2019年5月22日から26日までの5夜連続で放送されました。監督は鶴橋康夫さんら、脚本は羽原大介さんら、音楽は兼松衆さんです。設定を2019年に置き換え、財前を腹腔鏡手術のスペシャリストとして描くなど、現代の医療にあわせた変更が加えられています。
版ごとの主要キャスト比較
主な役を版ごとに並べると、次のようになります。
| 役名 | 1978年版 | 2003年版 | 2019年版 |
|---|---|---|---|
| 財前五郎 | 田宮二郎 | 唐沢寿明 | 岡田准一 |
| 里見脩二 | 山本學 | 江口洋介 | 松山ケンイチ |
| 花森ケイ子 | 太地喜和子 | 黒木瞳 | 沢尻エリカ |
| 東貞蔵 | 中村伸郎 | 石坂浩二 | 寺尾聰 |
| 財前又一 | 曽我廼家明蝶 | 西田敏行 | 小林薫 |
| 財前杏子 | 生田悦子 | 若村麻由美 | 夏帆 |
| 東佐枝子 | 島田陽子 | 矢田亜希子 | 飯豊まりえ |
| 鵜飼(医学部長) | 小沢栄太郎 | 伊武雅刀 | 松重豊 |
| 大河内教授 | 加藤嘉 | 品川徹 | 岸部一徳 |
| 柳原 | 高橋長英 | 伊藤英明 | 満島真之介 |
| 関口(原告側弁護士) | 児玉清 | 上川隆也 | 斎藤工 |
2019年版では、柳原弘が柳原雅博、関口仁が関口徹になるなど、一部の役名が変わっています。鵜飼も2003年版は鵜飼良一、2019年版は鵜飼裕次です。
主要キャスト紹介
財前五郎役:唐沢寿明(2003年版)
浪速大学第一外科の助教授で、食道がんの手術で名を上げた天才外科医です。次期教授の座を手に入れるためなら、義父の財力も派閥工作も使う野心家として描かれます。唐沢さんの財前は、傲慢さの裏に貧しい生まれと母への思いを抱えた人物として演じられ、大名行列のような総回診の場面は今も語り継がれています。
公式リンク:『白い巨塔』番組公式サイト(フジテレビ)
里見脩二役:江口洋介(2003年版)
第一内科の助教授で、財前とは同期。出世よりも患者と研究を優先する実直な医師です。医療裁判では原告側の証人として財前に不利な証言をし、大学を去ります。それでも最後まで財前と向き合い続ける存在で、物語の良心にあたる役です。
公式リンク:『白い巨塔』番組公式サイト(フジテレビ)
花森ケイ子役:黒木瞳(2003年版)
財前の愛人で、クラブのママ。財前の野心も弱さも見抜いたうえで、一歩引いた位置から彼を見つめる女性です。妻の杏子とは違い、財前が本音をこぼせる数少ない相手として、物語に陰影を与えます。
公式リンク:『白い巨塔』番組公式サイト(フジテレビ)
東貞蔵役:石坂浩二(2003年版)
第一外科の教授で、財前の上司。退官を前に、自分の言うことを聞かない財前を後継者にしたくないと考え、他大学の候補者を立てて教授選で対抗します。プライドと嫉妬に揺れながらも、終盤では医師としての姿勢を見せる人物です。
公式リンク:『白い巨塔』番組公式サイト(フジテレビ)
財前又一役:西田敏行(2003年版)
財前の妻・杏子の父で、財前産婦人科の院長。娘婿を教授にするため、豊富な資金で医師会や教授たちに働きかけます。豪快で俗っぽい一方、どこか憎めない人物として描かれています。
公式リンク:『白い巨塔』番組公式サイト(フジテレビ)
財前五郎役:岡田准一(2019年版)
2019年版の財前は、腹腔鏡手術のスペシャリストとして描かれます。岡田さんにとっては初めての医師役で、山崎豊子作品への出演も初めてでした。テレビ朝日のドラマに主演するのは、2001年の『反乱のボヤージュ』以来18年ぶりです。
公式リンク:『白い巨塔』キャスト(テレビ朝日公式)
里見脩二役:松山ケンイチ(2019年版)
第一内科の医師で、財前の同期。裁判で財前と大学に不利な証言をしたことで浪速大学を辞め、関西がんセンターで研究を続ける道を選びます。それでも財前の病が分かったあとは、主治医として彼を支えます。
公式リンク:松山ケンイチ(ホリプロ公式プロフィール)
花森ケイ子役:沢尻エリカ(2019年版)
財前の愛人で、バー「ラディゲ」のホステス。財前の野心を面白がりながら、彼の行く末を冷静に見ている女性です。
公式リンク:『白い巨塔』キャスト(テレビ朝日公式)
東貞蔵役:寺尾聰(2019年版)
第一外科の前教授で、退官後は近畿労災病院の院長。教授選では財前と対立しますが、物語の終盤では財前の病と向き合う場面もあります。
公式リンク:『白い巨塔』キャスト(テレビ朝日公式)
相関図の全体像
公式の相関図画像は版ごとに異なるため、ここでは共通する人物関係を文章で整理します。
中心にいるのは、第一外科の財前五郎と第一内科の里見脩二です。2人は同期で、互いの腕を認め合いながらも、医師としての生き方は正反対です。
財前の後ろ盾になるのが「財前家」のグループです。義父の財前又一が資金を出し、妻の杏子は父の意向に沿って夫を支えます。愛人の花森ケイ子は、財前家とは別の場所から財前を見守ります。故郷には、財前を女手ひとつで育てた実母がいます。
教授選では、大学内の派閥が相関図を形づくります。財前を後継にしたくない東貞蔵教授は他大学の候補を推し、医学部長の鵜飼は財前側について影響力を広げようとします。東の妻・政子や娘の佐枝子も、それぞれの立場で教授選に関わります。佐枝子は、里見の誠実さに惹かれていく人物です。
医療裁判では、亡くなった患者・佐々木庸平の妻よし江が原告になり、関口弁護士がつきます。被告の財前と大学の側には国平弁護士がつき、第一外科の柳原は真実と保身の間で揺れます。病理学科の大河内教授は、どの派閥にも属さない公正な立場として物語の節目に関わります。
『白い巨塔』あらすじ・結末ネタバレとキャスト相関図から読む原作との関係

ここからは、物語のあらすじを前半の教授選と後半の医療裁判に分けて紹介し、版ごとの結末の違いと原作との関係を見ていきます。
- 前半は第一外科教授の座をめぐる選挙、後半は患者の死をめぐる医療裁判
- 財前は教授選に勝つが、手術した患者の死をきっかけに訴えられる
- 第一審は財前側が勝つが、控訴審では原告側が勝つ流れが原作・各版で共通
- 財前の最期は、原作・2003年版・2019年版で病名や描き方が異なる
- 原作は患者への説明義務(インフォームド・コンセント)の考え方を広めたともいわれる
あらすじ(前半):教授選
浪速大学医学部第一外科の助教授・財前五郎は、食道外科の分野で名の知れた外科医です。次の第一外科教授は財前だと誰もが考えていましたが、教授の東貞蔵は、自分をしのぐ名声を得て傲慢にふるまう財前を快く思っていません。東は他大学から別の候補者を立て、財前の教授就任を阻もうとします。
財前は義父・又一の資金力を使い、医学部長の鵜飼や医師会の有力者に働きかけます。東の側も対抗し、教授選は金と票の取り合いになっていきます。選考委員会では候補が絞り込まれ、最後は決選投票へ。財前は僅差で勝ち、念願の第一外科教授になります。
その一方で、同期の里見は、内科医として患者に向き合い、地道な研究を続けています。教授選に奔走する財前を見て、里見は「医師としての本分を見失っていないか」と苦言を呈しますが、財前は聞き入れません。
あらすじ(後半):医療裁判
教授選のさなか、財前のもとに里見から一人の患者が紹介されます。佐々木庸平という商店の主人で、胃の病気を抱えていました。里見は術前に精密な検査をするよう勧めますが、財前は忙しさと過信からこれを軽く扱い、手術を行います。
術後、庸平の容体は悪化し、亡くなってしまいます。財前の説明に納得できない妻のよし江は、弁護士の関口とともに財前と大学を訴えます。大学側は組織の体面を守るために財前を支え、第一外科の医局員たちにも口裏を合わせるよう求めます。
第一審では、財前側の主張が認められ、財前が勝ちます。原告側に立って証言した里見は大学を追われる形になります。しかし控訴審では、良心の呵責に耐えかねた柳原や、事情を知る看護師の証言が裁判の流れを変えていきます。
結末ネタバレ:財前五郎の最期
控訴審では原告側が勝ち、財前は上告の意思を示します。しかし、その頃にはすでに財前自身の体をがんがむしばんでいました。手術の腕で頂点に立った外科医が、自分の病に気づくのが遅れたという皮肉が、物語の結末になります。
最期の時を迎えるにあたって財前が頼るのは、出世争いでも裁判でも対立してきた里見です。財前は医師として、そして一人の人間として自分の人生を振り返りながら亡くなります。権力の頂点を目指した男の死で物語が閉じるからこそ、『白い巨塔』という題名の重みが伝わってきます。
版ごとの結末の違い
大きな流れは同じでも、細部は版ごとに異なります。
原作小説では、財前の病は胃がんです。控訴審では、患者への説明が不十分だった点が認められて遺族側が一部勝訴します。財前は自分の遺体の病理解剖を求める遺書を残します。
2003年版では、病名が肺がんに変わります。東が手術を試みますが、開胸した時点で手の施しようのない状態でした。里見が脳への転移と余命を告げ、財前は里見に看取られて亡くなります。遺書も里見に宛てて書かれています。最終回が32.1%という高い視聴率を記録したのは、この結末を見届けようとした人が多かったからでしょう。
2019年版では、控訴審が結審したその日に、財前が裁判所の前で記者に囲まれる中で倒れます。病名はステージ4の膵臓がん。里見が主治医として治療を支えますが、やがてトルソー症候群による脳梗塞を起こし、最期を迎えます。財前の遺言により、遺体は病理解剖に付されます。
1978年版は全31話をかけて、原作の続編部分にあたる控訴審と財前の死までを描きました。財前を演じた田宮二郎さんが最終話の放送前に亡くなったことも重なり、放送当時は大きな反響を呼びました。
音楽の面では、2003年版は加古隆さんの重厚なテーマ曲が印象的で、ヘイリー(ヘイリー・ウェステンラ)さんの「アメイジング・グレイス」も主題歌として使われました。2019年版の音楽は兼松衆さんが担当しています。
原作小説『白い巨塔』との関係
原作は、山崎豊子さんが『サンデー毎日』に連載した長編小説です。1965年に正編、1969年に続編が新潮社から刊行されました。正編は教授選と第一審までで終わっていましたが、読者の反響を受けて続編が書かれ、控訴審と財前の死までが描かれました。現在の新潮文庫版は全5巻で、テレビ朝日の発表によるとシリーズ累計は600万部を超えています。
原作の舞台は昭和30年代の大阪です。2003年版は舞台を放送当時の現代に移し、2019年版はさらに2019年に設定を置き換えました。最新の医療技術や職名、病名が版ごとに変わるのはこのためです。一方で、教授選の派閥争い、患者の死をめぐる裁判、財前と里見の関係という骨組みは、どの版でも変わっていません。
『白い巨塔』は、患者に十分な説明をしたうえで同意を得るという考え方(インフォームド・コンセント)を、一般の人に広く知らせた作品ともいわれます。原作が発表されてから60年以上たった今も映像化が続くのは、医療と組織、個人の野心という主題が古びていないからでしょう。
配信・視聴方法(2026年10月時点)
2026年10月12日時点で、2003年版はフジテレビの番組公式サイトに「FODで過去の放送回を配信中」と案内されています。配信サービスの取り扱いは時期によって変わるため、視聴前に各サービスの作品ページで最新の情報を確認してください。
原作小説は新潮文庫(全5巻)で読むことができます。ドラマを見たあとに原作を読むと、版ごとの脚色の違いがよく分かります。
『白い巨塔』キャスト・相関図・あらすじまとめ
- 原作は山崎豊子さんの長編小説で、1963年から『サンデー毎日』に連載された
- 正編は1965年、続編は1969年に新潮社から刊行され、新潮文庫版は全5巻
- 主な映像化は1966年の映画と、1967年・1978年・1990年・2003年・2019年のテレビドラマ
- 1978年版はフジテレビ「土曜劇場」で全31話、財前五郎は田宮二郎さん
- 2003年版はフジテレビ「木曜劇場」で全21話、財前五郎は唐沢寿明さん
- 2019年版はテレビ朝日開局60周年記念の5夜連続ドラマ、財前五郎は岡田准一さん
- 里見脩二は1978年版が山本學さん、2003年版が江口洋介さん、2019年版が松山ケンイチさん
- 花森ケイ子は太地喜和子さん、黒木瞳さん、沢尻エリカさんが演じた
- 東貞蔵は中村伸郎さん、石坂浩二さん、寺尾聰さんが演じた
- 相関図の中心は、同期の財前五郎と里見脩二
- 財前家(又一・杏子)と愛人ケイ子が財前を支える
- 教授選では東派と鵜飼派の対立が人物関係の軸になる
- 医療裁判は、佐々木庸平の妻よし江と関口弁護士が原告側
- 前半は教授選、後半は患者の死をめぐる医療裁判が描かれる
- 第一審は財前側が勝つが、控訴審では原告側が勝つ
- 財前の病名は原作が胃がん、2003年版が肺がん、2019年版が膵臓がん
- 2003年版の最終回の視聴率は32.1%(関東地区)
- 2019年版は設定を2019年に置き換え、財前を腹腔鏡のスペシャリストとして描いた
- 2003年版はFODで配信中(2026年10月時点、フジテレビ公式サイトの案内)
参照元
- フジテレビ『白い巨塔』番組公式サイト
- テレビ朝日『白い巨塔』番組公式サイト
- テレビ朝日『白い巨塔』第五夜ストーリー
- 新潮社『白い巨塔〔一〕』
- オリコンニュース 岡田准一主演『白い巨塔』放送日と全キャスト発表
- MANTANWEB 白い巨塔:第五夜
- Wikipedia 白い巨塔(2003年のテレビドラマ)
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