
2024年3月22日、日本のミステリー史に燦然と輝く傑作が、ついに映像のベールを脱ぎました。綾辻行人氏のデビュー作にして、「映像化不可能」と長年言われ続けた『十角館の殺人』が、Huluオリジナルドラマとして実写化・独占配信されたのです。1987年の刊行以来、多くのミステリーファンを驚愕させ、その後の「新本格」ムーブメントを牽引した伝説の作品。その衝撃的なトリックと結末が、どのように映像で表現されたのか。配信開始と同時に、SNSでは原作ファン、未読者双方からの驚きと絶賛の声が溢れました。
物語の舞台は、1986年。孤島「角島(つのじま)」に建つ奇妙な十角形の館と、海を隔てた「本土」。二つの場所で同時進行する謎が、やがて一つの恐るべき真実へと収束していきます。
この記事では、この傑作ドラマの全貌を徹底解剖。豪華キャスト陣の詳細から、複雑な人間関係を示す相関図、そして物語の核心に迫る各話あらすじと衝撃の結末(ネタバレ)まで、余すところなく解説していきます。
記事のポイント
- 綾辻行人のデビュー作にして日本ミステリー史に残る傑作『十角館の殺人』が待望の実写化
- W主演は奥智哉(江南孝明 役)と青木崇高(島田潔 役)
- 孤島「角島」の十角館で起こる連続殺人と、本土で「死者からの手紙」の謎を追う二つの物語が交錯する
- 原作ファンも注目のキャスティングと、衝撃の結末・犯人に関するネタバレ(閲覧注意)
- 配信はHuluの独占配信(最新の配信状況は公式サイトで要確認)
【ドラマ】『十角館の殺人』キャスト・相関図・あらすじをネタバレ

チェックポイント
- Huluオリジナルドラマとしての基本情報、全5話一挙配信の詳細
- 物語の二つの舞台「本土」と「島」の主要キャストを徹底紹介
- 運命の7日間を過ごす「K大学ミステリ研究会」メンバーの役柄と俳優陣
- 「本土」と「島」の人間関係、そして半年前の「青屋敷事件」が絡む相関図を解説
- 第1話から最終話まで、衝撃の連続殺人と謎解きのプロセスを追う詳細なあらすじ
『十角館の殺人』とは?Huluオリジナルドラマの基本情報(配信日・全何話)
Huluオリジナル『十角館の殺人』は、2024年3月22日(金)午前10時(“十”時)という、作品にちなんだ日時に全5話が一挙独占配信されました。
原作は、1987年に刊行された綾辻行人氏のデビュー小説『十角館の殺人』。日本ミステリー界に「新本格」という一大ジャンルを確立した記念碑的作品であり、「館」シリーズの第1作目としても知られています。物語は、1986年の日本が舞台。パソコン通信がようやく普及し始めた頃で、携帯電話もインターネットも存在しない時代設定が、孤島でのクローズドサークル(閉鎖空間)という状況の絶望感を際立たせています。
「読者を騙す」ことに特化したその構造と、最終盤の「あの1行」で全てが反転する衝撃的なトリックから、長年にわたり「映像化は不可能」とされてきました。しかし、Huluと日本テレビがタッグを組み、『半沢直樹』や『VIVANT』の脚本家・八津弘幸氏と、『コールドケース』などで知られる内片輝監督という強力な布陣によって、奇跡の実写化が実現しました。
主要キャスト一覧と登場人物紹介(江南孝明、島田潔)
本作は、海を隔てた「本土」で謎を追う2人の登場人物をW主演としています。
江南孝明(かわみなみ たかあき) / 演:奥智哉
「本土」パートの主人公の一人。K大学工学部の学生で、ミステリ研究会の元メンバー。大学OBの中村紅次郎(角田晃広)を訪ねた際、偶然出会った島田潔と共に、「死んだはずの中村青司」から届いた謎の手紙の真相を追い始めます。好奇心旺盛でミステリー愛が強い青年ですが、どこか気弱な一面も。
演じるのは、ドラマ『仮面ライダーリバイス』で注目され、『ラストマン-全盲の捜査官-』など話題作への出演が続く若手実力派・奥智哉(おく ともや)。本作が連続ドラマ初主演となります。青木崇高演じる島田とのユニークなバディ感が、重厚な物語の中で一服の清涼剤となっています。
島田潔(しまだ きよし) / 演:青木崇高
「本土」パートのもう一人の主人公。江南が中村紅次郎の家で出会った謎の男。実家が寺であること以外、多くを語りませんが、卓越した推理力と大胆な行動力で江南を導きます。飄々(ひょうひょう)として掴みどころがなく、時に常識外れな言動で周囲を驚かせますが、その瞳の奥には真実を見抜く鋭い光を宿しています。
演じるのは、大河ドラマ『龍馬伝』や『鎌倉殿の13人』、映画『るろうに剣心』シリーズなど、数多くの作品で強烈な個性を放つベテラン・青木崇高(あおき むねたか)。原作ファンからも「島田潔そのもの」と絶賛されるほどのハマり役で、本作のミステリアスな魅力を牽引しています。
K大学ミステリ研究会(ミス研)メンバーのキャスト(エラリイ、アガサ、ルルウ、ポウ、ヴァン、オルツィ、カー)
物語のもう一つの舞台である孤島「十角館」。ここで合宿を行うK大学ミステリ研究会の現役メンバー7人。彼らは互いを敬愛するミステリー作家のニックネームで呼び合っています。
- エラリイ / 演:望月歩(もちづき あゆむ)医学部。ミス研の現リーダー格で、名探偵気取りの自信家。推理力は確かですが、時にその自信が仇となります。
- アガサ / 演:長濱ねる(ながはま ねる)薬学部。メンバーの紅一点で、華やかな雰囲気を持つ女性。コーヒーを淹れるのが上手い。
- ルルウ / 演:今井悠貴(いまい ゆうき)法学部。冷静沈着で、エラリイの推理にも的確なツッコミを入れます。
- ポウ / 演:鈴木康介(すずき こうすけ)医学部。エラリイの親友。社交的ですが、どこか影のある一面も。
- ヴァン / 演:小林大斗(こばやし だいと)理学部。大柄で無口。常にタバコをふかし、一歩引いた場所から皆を観察しています。
- オルツィ / 演:米倉れいあ(よねくら れいあ)文学部。好奇心旺盛で、天真爛漫な性格。メンバーの中では最年少。
- カー / 演:瑠己也(るきや)文学部。短気で直情的な性格。オルツィに想いを寄せています。
彼らは全員、半年前のミス研の飲み会で起きた「ある事故」に関わっており、その過去が今回の事件に暗い影を落とすことになります。
相関図で見る登場人物の関係性(ミス研メンバーと本土の人物)
本作の相関図は、「島(十角館)」と「本土」の二つのグループに大別されます。
【島(十角館)】
- K大学ミステリ研究会メンバー7名(エラリイ、アガサ、ルルウ、ポウ、ヴァン、オルツィ、カー)
- 彼らは、半年前の「青屋敷事件」の舞台となった角島で合宿を行う。
- 全員が、元メンバー・中村千織(なかむら ちおり)の事故死に関わるという暗い秘密を共有している。
【本土】
- 江南孝明(奥智哉):ミス研の元メンバー。千織の事故を機に会を辞めている。
- 島田潔(青木崇高):謎の男。江南と行動を共にし、事件の真相に迫る。
- 中村青司(なかむら せいじ / 演:仲村トオル):故人。十角館と青屋敷を設計した天才建築家。半年前、青屋敷で謎の焼死を遂げたとされる。物語のすべての発端となる人物。
- 中村紅次郎(なかむら こうじろう / 演:角田晃広):中村青司の弟。江南や島田に、青司に関する情報を提供する。
- 中村千織(演:菊池和澄):故人。中村青司の娘で、ミス研の元メンバー。半年前に事故死している。
物語は、島で起こる連続殺人と、本土で江南・島田コンビが進める「青屋敷事件」および「中村青司からの手紙」の調査が、密接に絡み合いながら進行します。相関図の中心には、常に故人であるはずの「中村青司」の影がちらつきます。
各話のあらすじをネタバレ解説(1話〜最終回)
ここでは、全5話のストーリーをネタバレありで詳細に解説します。
第1話 あらすじ・ネタバレ
1986年。K大学ミステリ研究会の7人(エラリイ、アガサ、ルルウ、ポウ、ヴァン、オルツィ、カー)は、合宿のために角島を訪れる。そこは、半年前、天才建築家・中村青司が謎の焼死を遂げた「青屋敷」の跡地と、彼が設計した奇妙な「十角館」が建つ孤島だった。
一方、本土では、元ミス研メンバーの江南孝明が、死んだはずの中村青司から「お前たちが殺した千織は、私の娘だった」という内容の手紙を受け取る。不審に思った江南は、青司の弟・中村紅次郎を訪ねるが、そこで島田潔と名乗る謎の男に出会う。
島田もまた青司から手紙を受け取っていた。二人は、青司が本当に死んでいるのか、半年前の青屋敷事件の真相は何だったのかを調査し始める。
その夜、十角館で最初の惨劇が起こる。メンバーの一人、オルツィが何者かによって殺害されているのが発見される。彼女の手首は、青屋敷事件の被害者と同様に、切断されていた。
第2話 あらすじ・ネタバレ
孤立した島で起きた殺人に、ミス研メンバーは震撼する。外部からの侵入者の痕跡はなく、犯人は7人の中にいるとしか思えない。疑心暗鬼が広がる中、エラリイは名探偵として犯人捜しを主導しようとする。
しかし、犯行は止まらない。翌朝、カーがコーヒーを飲んだ直後に苦しみ出し、毒殺されてしまう。カップには毒物が仕込まれていた。さらにその夜、アガサまでもが毒入りのタバコによって殺害される。
残されたのはエラリイ、ルルウ、ポウ、ヴァンの4人。
本土では、江南と島田が青屋敷事件の調査を続行。事件は、青司が妻・和枝の不倫に怒り、妻と使用人夫婦を殺害した後、青屋敷に火を放って自殺した、と警察は断定していた。しかし、島田は警察の捜査資料からいくつかの不審な点を見つけ出す。
第3話 あらすじ・ネタバレ
島では、恐怖が支配していた。互いへの不信感が募る中、4人は生き残るために単独行動を避ける。しかし、ポウが睡眠薬で眠らされた隙に、ロープで絞殺される。
さらに、ルルウまでもが何者かに撲殺されているのが発見される。これで残されたのはエラリイとヴァンの2人のみ。エラリイは、無口で常に不気味な雰囲気を漂わせるヴァンこそが犯人ではないかと疑う。
本土では、江南が半年前のミス研の飲み会について回想する。中村千織は、あの夜、急性アルコール中毒で死亡していた。江南は、その場にいながら彼女を救えなかったことに罪悪感を抱いていた。島田は、千織の死と青屋敷事件、そして今回の十角館での事件がすべて繋がっていると確信する。
第4話 あらすじ・ネタバレ
島。ついにエラリイも遺体で発見される。状況から、ヴァンがエラリイを殺害した後、青屋敷の焼け跡で焼身自殺を遂げたかのように見えた。これで島には生存者はいなくなったかと思われた。
本土。江南は、島田と共に青屋敷事件の唯一の目撃者(とされる)庭師の妻・吉川政子(草刈民代)を訪ねる。政子の証言から、島田は青屋敷事件の驚くべき真相にたどり着く。
一方、江南は独自に調査を進め、元ミス研メンバーで、現在は行方を知れない守須恭一(もりす きょういち)という学生の存在に行き当たる。守須もまた、中村青司からの手紙を受け取っていた一人だった。
江南が守須のアパートを訪ねると、そこには守須からの手紙が残されていた。その手紙を読んだ江南は、驚愕の事実に気づく。
「ヴァン・ダイン(Van Dine)です」
守須のアパートを訪ねてきた人物が、江南にそう名乗る。その顔は、江南のよく知る人物だった。
第5話(最終回) あらすじ・ネタバレ
すべての謎が解き明かされる。
島田と江南は角島へ渡る。そこで彼らが見たのは、十角館の焼け跡と、一人の生存者だった。
本土で江南の前に現れた守須恭一。彼こそが、十角館で「ヴァン」として振る舞っていた張本人であり、今回の連続殺人事件の真犯人だった。
守須は、ミス研メンバーでありながら、江南の友人として本土にも存在していた。彼は小型ボートを使い、島と本土を密かに行き来することで、本土でのアリバイを確保しながら、島で殺人を実行していた。
彼の動機は、恋人であった中村千織の復讐。半年前の飲み会で、ミス研メンバー(エラリイ、アガサ、ルルウ、ポウ、カー、オルツィ、そして江南)は、酒を飲めない千織に無理やり酒を飲ませ、急性アルコール中毒で死なせてしまった。彼らはその事実を隠蔽していた。
守須は、彼ら全員を「中村青司の亡霊」として裁くため、この計画を実行した。
さらに、島田は青屋敷事件の真相も暴露する。青屋敷で殺人を犯したのは、妻の不倫を知った中村青司本人だった。だが、青司もまた、その場で庭師の吉川に殺害されていた。そして守須は、その吉川をも殺害し、すべてを青屋敷事件の犯人の仕業に見せかけていたのだった。
江南は、自分もまた裁かれるべき一人であったことを知り、愕然とする。
(※より詳細なトリックと犯人の解説は、次のセクションで行います)
原作は綾辻行人のデビュー作(館シリーズ第1弾)
本作の原作は、1987年に講談社から刊行された綾辻行人氏の『十角館の殺人』です。京都大学推理小説研究会に在籍していた綾辻氏が、在学中に執筆したデビュー作であり、島田荘司氏の推薦を受けて世に出ました。
当時のミステリー界は、社会派リアリズムが主流でしたが、本作はトリックやロジック、読者への挑戦といった「本格ミステリー」の面白さを前面に打ち出し、大センセーションを巻き起こしました。これが「新本格ミステリー」ムーブメントの幕開けとなり、のちのミステリー作家たちに多大な影響を与えました。
また、本作は『水車館の殺人』『迷路館の殺人』へと続く「館」シリーズの第1作目でもあります。どの作品も、奇妙な「館」を舞台に、名探偵・島田潔(ドラマでは青木崇高が演じた人物とは異なる設定のキャラクターとして登場することが多い)が活躍する、本格ミステリーの金字塔として知られています。
実写化の見どころと注目ポイント(映像化不可能と言われたトリック)
本作の最大の見どころは、やはり「映像化不可能」と言われた原作のトリックを、どのように実写で表現したかに尽きます。原作は、読者の「思い込み」を利用した叙述トリック(文章だからこそ可能な騙し方)が核となっています。
ドラマ版の制作陣は、この難題に対し、映像ならではのテクニックで挑みました。例えば、「本土」の江南と「島」のミス研メンバーが、同じ「ミス研」というコミュニティに属しているように見せかけつつ、両者の時間軸や関係性を巧みにぼかす演出。
また、1986年という時代設定も重要です。携帯電話やSNSがないため、島は完全なクローズドサークルとなり、本土との連絡も容易につきません。公衆電話、タバコ、カセットテープといった小道具が、当時の空気感をリアルに再現し、物語の緊迫感を高めています。
内片輝監督による、光と影を巧みに使った重厚でダークな映像美も、原作の持つ不気味な雰囲気を完璧に再現。原作ファンであればあるほど、「あの1行」の衝撃がどのように映像化されるのか、固唾を飲んで見守ることになりますが、ドラマ版は原作の衝撃を損なうどころか、映像と音響によって増幅させることに成功しています。
中村青司(仲村トオル)とは?物語の鍵を握る天才建築家
中村青司(なかむら せいじ)は、物語の開始時点ですでに故人となっている人物ですが、全編を通して最も重要な役割を担うキーパーソンです。
彼は、常軌を逸したデザインの「青屋敷」と、その離れである「十角館」を設計した天才建築家。非常に独占欲が強く、偏屈な性格であったとされています。
半年前、自らが建てた青屋敷に火を放ち、妻・和枝と使用人夫婦を殺害し、自らも焼死したとされています。この「青屋敷事件」が、すべての発端です。
ドラマでは、この謎多き人物を、ベテラン俳優の仲村トオルが演じています。回想シーンや肖像画、そして彼が残したとされる手紙によって、その狂気と才能が強烈な印象を残します。彼が本当に死んでいるのか、生きているとすればどこにいるのか? 彼の存在そのものが、島と本土の登場人物たちを翻弄し続ける、最大の「謎」として機能しています。
【ドラマ】『十角館の殺人』キャスト・相関図・あらすじをネタバレしたら

チェックポイント
- Huluオリジナルとしての独占配信情報と視聴方法
- 原作小説とドラマ版の比較、映像化における変更点
- 【核心ネタバレ】衝撃の犯人の正体と、二重三重に仕掛けられたトリックの全貌
- 作品世界を彩る主題歌「ずっと真夜中でいいのに。」と強力な制作スタッフ陣
- 原作ファン・新規視聴者双方からの絶賛の声と、本作に似たおすすめミステリードラマ
配信はどこで見れる?Huluでの視聴方法と月額料金
Huluオリジナルドラマ『十角館の殺人』は、動画配信サービス「Hulu(フールー)」でのみ視聴可能です。
2024年3月22日から全5話が一挙独占配信されています。そのため、Netflix、Amazonプライム・ビデオ、U-NEXT、ディズニープラスといった他の動画配信サービスでは一切視聴することができません。
Huluは、月額1,026円(税込)で10万本以上の映画、ドラマ、アニメ、バラエティが見放題となるサービスです。日テレ系のドラマやバラエティに強いのが特徴で、『十角館の殺人』も日本テレビが制作に深く関わっています。
初めて登録する場合は無料トライアル期間が設けられている場合もありますが、キャンペーン内容は随時変更されるため、登録前に必ずHuluの公式サイトで最新の情報をご確認ください。
原作小説との違い・ドラマオリジナル要素の比較
今回の実写化は、原作小説に対して驚くほど忠実であると、多くの原作ファンから絶賛されています。物語の根幹をなすトリック、登場人物の設定、1986年という時代背景、そして結末の衝撃に至るまで、原作の精神を最大限に尊重して映像化されています。
もちろん、映像化にあたっての細かな変更点や、オリジナル要素も存在します。
例えば、原作では島田潔は京都の寺の息子ですが、ドラマ版ではその設定はやや曖昧にされつつも、飄々とした魅力的な探偵役として再構築されています。また、江南と島田のバディとしてのコミカルな掛け合いは、映像作品として視聴者を引き込むための脚色として効果的に機能しています。
最も大きな違いは、「叙述トリック」という文章表現を「映像トリック」に置き換えた点です。原作では、ミス研メンバー(島)と江南(本土)の視点が交互に描かれますが、読者は無意識のうちに彼らが「同じ大学の、顔見知りの仲間」であると誤認するように誘導されます。
ドラマ版では、この誤認を視覚的に作り出すため、島のシーンと本土のシーンの切り替え、ミス研メンバーが江南について言及する際の微妙な編集、そして何より「ヴァン」と「守須」という同一人物を、島の薄暗い環境と本土の日常風景の中で、巧みに「別人」であるかのように見せる演出が施されています。
犯人は誰?衝撃の結末・トリックまでをネタバレ考察(閲覧注意)
【!!これより先、物語の核心に触れる重大なネタバレを含みます!!】
ドラマ『十角館の殺人』の真犯人は、**守須恭一(もりす きょういち)**です。
彼は、本土パートでは江南の友人で、同じく中村青司からの手紙を受け取った元ミス研メンバーとして登場します。しかし、その正体は、島パートで「ヴァン」というニックネームで呼ばれていた、無口な大柄の学生でした。
【トリックの全貌】
- 「守須」=「ヴァン」という同一人物視聴者は、「島」のミス研メンバー7人と、「本土」の江南たちを、全く別のグループとして認識するように誘導されます。しかし、実際は「ヴァン」こそが「守須」でした。彼は「本土」で江南と接触してアリバイを作りつつ、小型ボートで夜通し海を渡り、「島」で「ヴァン」として振る舞い、計画的に殺人を実行していました。ニックネームも巧妙なトリックの一部です。他のメンバーが「エラリイ・クイーン」や「アガサ・クリスティ」など実在の作家名なのに対し、「ヴァン・ダイン」だけが、江南が「守須(モリス)」という実在の友人を連想しにくいニックネームでした。(※原作ではより巧妙な名前のトリックが使われています)
- 動機:中村千織の復讐守須の動機は、恋人であった中村千織の復讐です。半年前、ミス研の飲み会で、千織は他のメンバー(オルツィ、カー、アガサ、ポウ、ルルウ、エラリイ)から無理やり酒を飲まされ、急性アルコール中毒で死亡しました。江南もその場にいましたが、止められませんでした。メンバーは千織の死を「事故」として隠蔽。守須はこの7人全員(自分も殺されるフリをする計画だったが、江南が島に来なかったため計画を変更)を、千織の父・中村青司の亡霊として裁くことを決意しました。
- 青屋敷事件の真相半年前の青屋敷事件も、守須によって利用されました。
- 真実: ①中村青司が、妻・和枝と弟・紅次郎の不倫を知り、和枝と使用人夫婦を殺害。②その現場に居合わせた庭師・吉川(誠一)が、恐怖から青司を殺害。③吉川が青屋敷に火を放ち逃亡。
- 守須の介入: 守須は、千織の死の直後、この真相を知りました。彼は復讐計画のため、逃亡していた吉川を殺害。そして、吉川の遺体を青屋敷の焼け跡に隠し、吉川が青屋敷事件の犯人であるかのように偽装しました。
守須は、この二つの事件を巧みに結びつけ、ミス研メンバーを十角館におびき寄せ、青屋敷事件の「見立て殺人」を実行したのです。
最終話、本土で江南の前に現れた守須が「ヴァン・ダインです」と名乗るシーンは、原作の「あの1行」に匹敵する、映像表現の極致と言える衝撃的なものでした。
ロケ地・撮影場所はどこ?(角島、十角館の撮影)
物語の重要な舞台となる架空の島「角島(つのじま)」。この孤島の荒涼とした雰囲気は、大分県でのロケハンによって見つけ出された海岸線で撮影されました。ゴツゴツとした岩肌が連なる風景は、本土から隔絶されたクローズドサークルの絶望感を完璧にビジュアル化しています。
一方、物語の象徴である「十角館」は、CGではなく、大規模なオープンセットとして実際に建設されました。十角形のテーブル、十角形のカップ、十角形の照明など、細部にまでこだわったデザインは、建築家・中村青司の狂気を体現しています。このリアルなセットが、キャストの緊迫した演技を引き出し、視聴者を物語の世界へ深く没入させることに成功しています。
主題歌は「ずっと真夜中でいいのに。」の「低血ボルト」
本作のテーマ曲は、特定のアーティストへの依頼によって書き下ろされた新曲ではなく、既存の楽曲が起用されました。
それが、人気アーティスト「ずっと真夜中でいいのに。」(通称:ずとまよ)が2020年にリリースした楽曲、「低血ボルト」です。
この起用は、原作者の綾辻行人氏が、かねてより「ずとまyo」のファンであったことがきっかけの一つとされています。制作陣が実写化にあたり、どの楽曲がふさわしいか模索していた際、綾辻氏本人も交えた話し合いの中で「低血ボルト」が候補に上がり、満場一致で決定したといいます。
ダークでありながら疾走感のある曲調、ミステリアスで難解な歌詞の世界観が、『十角館の殺人』の持つ不気味さ、焦燥感、そして衝撃の結末へと向かう物語のドライブ感と奇跡的なシンクロを見せています。エンドロールでこの曲が流れるたび、視聴者は物語の深い余韻に突き落とされます。
脚本(八津弘幸)・監督(内片輝)と制作陣
本作の成功は、強力な制作スタッフ陣の存在なくして語れません。
監督:内片輝(うちかた あきら)
『警視庁捜査一課9係』シリーズや、WOWOWの『コールドケース 〜真実の扉〜』、『シグナル 長期未解決事件捜査班』など、骨太な刑事ドラマやサスペンス作品で高い評価を得てきた監督です。
本作でも、光と影のコントラストを強調した映像美、閉塞感を煽るカメラワーク、そしてキャストの微細な表情の変化を捉えることで、原作の持つ心理的な恐怖と緊張感を巧みに映像化しています。
脚本:八津弘幸(やつ ひろゆき)
『半沢直樹』、『ルーズヴェルト・ゲーム』、『下町ロケット』、そして『VIVANT』など、池井戸潤作品のドラマ化をはじめとする国民的ヒット作を次々と手掛けてきたトップ脚本家です。
「映像化不可能」と言われた原作の複雑なプロットと叙述トリックを、全5話という限られた尺の中で、破綻なく、かつエンターテイメントとして再構築する手腕は見事というほかありません。特に、島と本土の二元中継をテンポよく進めながら、視聴者を巧みにミスリードしていく構成力は、八津氏ならではのものです。
視聴者の感想・評価とSNSでの反響
配信が開始されるや否や、X(旧Twitter)などのSNSでは『十角館の殺人』がトレンド入りし、絶賛の嵐が巻き起こりました。
【原作ファンからの声】
- 「不安だったけど、完璧な実写化。100点満点」
- 「あの1行の衝撃を、映像で超えてくるとは思わなかった」
- 「内片監督の映像美と、ずとまよの主題歌が合いすぎている」
- 「青木崇高の島田潔が、想像していた島田潔そのものだった」
- 「原作へのリスペクトが隅々まで感じられて、涙が出た」
【原作未読の視聴者からの声】
- 「最終話、リアルに声が出た。今年一番の衝撃」
- 「5話一気見。こんなに面白いミステリードラマは初めて」
- 「犯人がわかった瞬間、鳥肌が止まらなかった。もう一度1話から見直す」
- 「キャスト全員の演技が素晴らしく、完全に騙された」
このように、原作ファンも新規視聴者も問わず、そのクオリティの高さと衝撃的な展開に、高い評価が寄せられました。Huluオリジナル作品として、歴史に残る傑作ドラマとなったと言えるでしょう。
『十角館の殺人』に似たおすすめミステリードラマ3選
『十角館の殺人』の「孤島での連続殺人(クローズドサークル)」「二つの時間軸や場所が交錯する謎」「衝撃のどんでん返し」といった要素に魅了された方へ、おすすめのミステリードラマを3作品ご紹介します。
- 『テセウスの船』(2020年 / TBS系)主人公が過去にタイムスリップし、父親が起こしたとされる連続毒殺事件の真相に迫る物語。現代と過去、二つの時間軸が交錯しながら謎が深まっていく構成が『十角館』と共通します。「犯人は誰か」という考察が放送当時に白熱した、サスペンスフルな作品です。
- 『あなたの番です』(2019年 / 日本テレビ系)あるマンションの住民会で行われた「交換殺人ゲーム」が現実となり、次々と犠牲者が出ていくノンストップミステリー。登場人物全員が怪しく、誰が犯人なのか最後まで分からない緊迫感、そして衝撃的な黒幕の存在が『十角館』の面白さに通じます。
- 『すべてがFになる』(2014年 / フジテレビ系)『十角館』と同じく、新本格ミステリー作家・森博嗣のデビュー作(S&Mシリーズ)を原作としたドラマ。天才的な頭脳を持つ工学部准教授・犀川創平と、女子学生・西之園萌絵が、密室殺人などの難事件に挑みます。『十角館』が好きな方なら、同じく理系ミステリーの最高峰である本作も楽しめること間違いありません。
【ドラマ】『十角館の殺人』キャスト・相関図・あらすじのネタバレまとめ
- 『十角館の殺人』は綾辻行人の同名小説を原作としたHuluオリジナルドラマ。
- 2024年3月22日からHuluで独占配信が開始された(全5話)。
- 本土パートの主人公・江南孝明(かわみなみ たかあき)役は奥智哉。
- 江南とバディを組む島田潔(しまだ きよし)役は青木崇高。
- 物語の舞台は孤島「角島」に建つ「十角館」。
- K大学ミステリ研究会の7人が合宿で十角館を訪れる。
- ミス研メンバーは「エラリイ」「アガサ」「ルルウ」「ポウ」「ヴァン」「オルツィ」「カー」と呼び合う。
- キャストには望月歩、長濱ねる、今井悠貴、鈴木康介、小林大斗、米倉れいあ、瑠己也が名を連ねる。
- 島ではメンバーが一人ずつ殺害されていく連続殺人が発生する。
- 一方、本土では江南のもとに死んだはずの中村青司から手紙が届く。
- 江南と島田は、半年前の「青屋敷事件」の謎を追い始める。
- 十角館を設計した天才建築家・中村青司役は仲村トオル。
- 島と本土、二つの視点で物語が同時進行し、やがて一つの真相に収束する。
- 原作は「新本格ミステリー」の金字塔と呼ばれ、映像化不可能と言われていた。
- ドラマ版の監督は内片輝、脚本は八津弘幸が務める。
- 主題歌は「ずっと真夜中でいいのに。」の「低血ボルト」。
- 衝撃的な結末と犯人の正体、その動機が最大の焦点。
- 視聴にはHuluへの登録が必要(最新情報は公式サイトで要確認)。
- キャスト、相関図、あらすじを理解した上で見ると、伏線がより楽しめる。
1987年の原作誕生から約37年。長年待ち望まれた「完璧な実写化」が、ついにHuluで実現しました。原作の衝撃を知る人も、これから初めてこの物語に触れる人も、等しく驚愕すること間違いなしの傑作ドラマです。まだ見ていない方は、ぜひHuluで、この日本ミステリー史に残る衝撃の結末をご自身の目でお確かめください。
参照元URL
- Huluオリジナル『十角館の殺人』公式サイト: https://www.hulu.jp/jukkakukannosatsujin
- 『十角館の殺人』|日本テレビ公式サイト: https://www.ntv.co.jp/jukkakukannosatsujin/
- 『十角館の殺人』(綾辻 行人):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部: https://book-club.kodansha.co.jp/product?item=0000188686