
2013年に公開されたスタジオジブリの映画『かぐや姫の物語』は、高畑勲監督が8年の歳月をかけて完成させた渾身の大作です。日本最古の物語文学として知られる『竹取物語』を原作に、かぐや姫がなぜ地上に来て、なぜ月に帰らなければならなかったのかを深く掘り下げた本作は、第87回アカデミー賞長編アニメーション映画賞にノミネートされるなど世界的にも高い評価を受けました。本記事では、『かぐや姫の物語』のあらすじを序盤から結末まで徹底的に解説し、声優キャストや主題歌、高畑勲監督の演出意図についても詳しくお伝えします。
- 高畑勲監督の遺作となった本作の制作背景と作品の全貌がわかる
- 序盤から結末まであらすじを丁寧に解説
- 朝倉あき・高良健吾・宮本信子ら豪華声優キャストを紹介
- 原作『竹取物語』との違いや高畑監督独自の解釈を解説
- ラストシーンの「月に帰る」場面に込められた深い意味を考察
- DVD・Blu-rayなどの視聴方法を案内
『かぐや姫の物語』あらすじの基本情報

映画『かぐや姫の物語』は、スタジオジブリの高畑勲監督が14年ぶりに手掛けた長編アニメーション映画です。1999年の『ホーホケキョ となりの山田くん』以来の監督作品であり、高畑監督は本作完成から4年半後の2018年4月に82歳で逝去されたため、本作が遺作となりました。制作には8年の歳月と約50億円の製作費が投じられ、水彩画のような独特のタッチで描かれた映像は、従来のアニメーションの概念を覆す芸術的な仕上がりとなっています。音楽は久石譲さんが担当し、主題歌「いのちの記憶」は二階堂和美さんが作詞・作曲・歌唱を務めました。本作はアカデミー賞長編アニメーション映画賞にノミネートされ、ジブリ作品の中でも特に芸術性の高い作品として国内外で高く評価されています。
- 高畑勲監督が8年の歳月をかけて制作した遺作
- 総製作費約50億円を投じた超大作
- 水彩画タッチの独特のアニメーション技法が国内外で話題に
- 第87回アカデミー賞長編アニメーション映画賞ノミネートの快挙
- 音楽は久石譲、主題歌は二階堂和美が担当
- 配給は東宝が担当し全国公開された
『かぐや姫の物語』あらすじの基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | かぐや姫の物語 |
| 公開日 | 2013年11月23日 |
| 監督・原案・脚本 | 高畑勲 |
| 脚本 | 高畑勲、坂口理子 |
| 原作 | 竹取物語 |
| 制作 | スタジオジブリ |
| 上映時間 | 137分 |
| 音楽 | 久石譲 |
| 主題歌 | 二階堂和美「いのちの記憶」 |
『かぐや姫の物語』声優キャスト一覧
| 声優名 | 役名 | 役柄 |
|---|---|---|
| 朝倉あき | かぐや姫 | 竹から生まれた姫。自由を求める |
| 高良健吾 | 捨丸 | かぐや姫の幼なじみの青年 |
| 地井武男/三宅裕司 | 翁 | 竹取の翁。姫を育てる |
| 宮本信子 | 媼 | 翁の妻。姫を慈しむ |
| 高畑淳子 | 相模 | 姫の教育係の女房 |
| 田畑智子 | 女童 | 姫に仕える侍女 |
| 立川志の輔 | 斎部秋田 | 姫の名付け親 |
| 上川隆也 | 石作皇子 | 求婚する貴族 |
| 伊集院光 | 阿部右大臣 | 求婚する貴族 |
| 中村七之助 | 御門 | かぐや姫に求婚する天皇 |
| 橋爪功 | 車持皇子 | 求婚する貴族 |
| 仲代達矢 | 炭焼きの老人 | 山で暮らす老人 |
翁役の地井武男さんは、本作の収録中に急逝されたため、途中から三宅裕司さんが引き継いでいます。地井さんの翁への深い愛情が込められた声は、映画の前半部分に大切に残されています。かぐや姫の声を担当した朝倉あきさんは、山里で野山を駆け回る快活な少女時代の瑞々しさから、都で高貴な姫君として教育を受ける中で次第に苦悩を深めていく大人の女性まで、見事に演じ分けました。朝倉さんの透明感のある声質は、かぐや姫のこの世のものではない美しさと儚さを見事に表現しています。
媼役の宮本信子さんは、かぐや姫を実の娘以上に慈しむ母の姿を温かみのある声で表現しています。翁が姫の出世や名誉を願うのに対し、媼は姫の幸せだけを祈る存在であり、宮本さんの穏やかな演技が物語に救いの光を与えています。捨丸役の高良健吾さんは、幼なじみとして姫を慕い続ける木地師の青年を誠実に演じ、物語終盤の空を飛ぶシーンでは切ない愛情を感じさせる好演を見せました。
『かぐや姫の物語』あらすじ:序盤〜山里での暮らし
昔々、竹取の翁が山で光り輝く竹を見つけると、中から手のひらに乗るほどの小さく美しい姫が現れました。翁はこの不思議な姫を家に連れ帰り、妻の媼とともに大切に育てることにします。姫は驚くべき速さで成長し、一日ごとにみるみる大きくなっていく様子に周囲は驚きを隠せません。近所の子どもたちからは「タケノコ」と呼ばれて親しまれるようになります。
山里での暮らしの中で、姫は捨丸たち子どもたちと野山を駆け回り、四季の移ろいを全身で感じながら自由で幸せな時を過ごしました。春には花を摘み、夏には川で水遊びをし、秋には木の実を拾い、冬には雪の中を走り回る日々。虫や鳥、花や風と戯れるこの時間は、姫にとってかけがえのないものでした。捨丸は姫に特別な感情を抱くようになりますが、この山里での純粋な幸福は長くは続きません。翁は竹から金や美しい衣が次々と出てくることに天のお告げを感じ、姫を高貴な姫君として都で育てるべきだと確信するようになります。
『かぐや姫の物語』あらすじ:中盤〜都での暮らし
翁の決断により、一家は都に移り住みます。翁は竹から授かった金を惜しみなく使い、立派な屋敷を構えました。教育係として雇われた相模(声:高畑淳子)のもとで、かぐや姫は琴や和歌、書道といった高貴な姫君にふさわしい作法や教養を身につけていきます。侍女の女童(声:田畑智子)が姫に寄り添い、慣れない都の生活を支えました。名付け親の斎部秋田(声:立川志の輔)によって「なよ竹のかぐや姫」の名を与えられ、成人の儀と披露宴が盛大に催されます。
しかし、都の生活はかぐや姫にとって窮屈そのものでした。山里の自由を知っている姫にとって、貴族社会のしきたりや体面を重んじる文化は息苦しく感じられます。お歯黒を塗り、眉を落とし、十二単を着て座り続ける毎日は、野山を駆け回っていた姫には耐えがたいものでした。成人の儀と披露宴の席で酔った貴族たちの醜態を目の当たりにした姫は、宴席から逃げ出し、雪の中を故郷の山里に向かって一目散に走ります。このシーンは本作屈指の名場面であり、水彩画タッチの繊細な線が突然荒々しいタッチに変わり、姫の激しい感情が画面全体からほとばしります。高畑監督はこのシーンのためだけに膨大な作画枚数を費やしたことでも知られています。
姫の美しさの噂は都中に広まり、5人の貴族が求婚してきます。石作皇子(声:上川隆也)、車持皇子(声:橋爪功)、阿部右大臣(声:伊集院光)ら求婚者たちに対し、姫は仏の御石の鉢や蓬莱の玉の枝といった実在しないものを持ってくるよう無理難題を突きつけて全員を退けます。さらに御門(声:中村七之助)からも求婚されますが、姫はこれも強く拒否します。姫の中には、山里で過ごした自由な日々への強い郷愁と、自分らしく生きたいという切実な願いがありました。
『かぐや姫の物語』あらすじを深掘り解説

『かぐや姫の物語』は、単に『竹取物語』をアニメ化した作品ではありません。高畑勲監督は原作に独自の解釈を加え、「なぜかぐや姫は地上に来たのか」「人が生きるとはどういうことか」という普遍的な問いを作品全体に込めています。水彩画のような柔らかなタッチの映像と、久石譲さんの繊細な音楽が、この深遠なテーマを見事に表現しています。ここからは物語の結末と、作品に込められた意味について詳しく解説していきます。
- 高畑監督は「なぜかぐや姫は地上に来たのか」を独自に解釈
- 月に帰るラストシーンには「死」のメタファーが込められている
- 捨丸との空を飛ぶシーンは映画オリジナルの名場面
- 天の羽衣をまとった瞬間に記憶が消える演出が衝撃的
- ジブリ作品の中でも特に芸術性の高い作品
『かぐや姫の物語』あらすじ:終盤〜月に帰る結末
※ここからは結末の重要なネタバレを含みます。未視聴の方はご注意ください。
物語の終盤、かぐや姫は月からの迎えが来ることを翁と媼に告げます。実はかぐや姫が御門に抱き寄せられた瞬間、あまりの苦しさに月を見上げて涙を流し、心の中で「帰りたい」と願ってしまったことが、月の使者を呼ぶきっかけになっていたのです。姫自身もその願いを後悔していましたが、一度発せられた望みは取り消すことができませんでした。翁は財を投じて多くの武士を雇い、屋敷の周りに兵を配置して月の使者を退けようとします。しかし天から降りてくる月の使者たちが奏でる明るく軽やかな音楽の前に、武士たちは眠りに落ち、人間の抵抗は全く無力でした。
月の使者が来る前、かぐや姫は幼なじみの捨丸と再会します。既に家庭を持つ身でありながら姫への想いを断ち切れない捨丸と、地上での自由な幸せを象徴する存在である捨丸に最後にすがるかぐや姫。二人は手を取り合って空を飛び、かつて共に駆け回った山里の上空を巡ります。この美しくも切ないシーンは映画オリジナルの名場面で、姫の地上での幸せの記憶を凝縮した瞬間として描かれています。
月の使者が天から降りてくるシーンは、明るく軽やかな音楽が流れる中で描かれますが、その陽気さがかえって不気味さと恐怖を際立たせています。かぐや姫は天の羽衣を着せられる前に翁と媼に最後の別れを告げますが、羽衣をまとった瞬間、地上での全ての記憶が消えてしまいます。穏やかな表情で月へと帰っていく姫。しかし最後の最後に振り返った姫の目には涙が光っており、地上での生の記憶が完全には消えなかったことが示唆されます。
高畑監督はこの結末に「生きることの意味」を込めています。月の世界が感情のない清浄な世界であるのに対し、地上は喜びも悲しみもある不完全な世界です。かぐや姫は地上で感情を知り、愛を知り、苦しみを知りました。それこそが「生きる」ということであり、たとえ記憶が消えても、その体験には意味があったのだというメッセージが伝わってきます。高畑監督は生前のインタビューで、かぐや姫が月に帰ることは一種の「死」のメタファーであるとも語っており、限りある命の中で精一杯生きることの尊さを訴えかけています。この普遍的なテーマは、公開から年月が経っても色あせることなく、多くの観客の心に深く響き続けています。
主題歌「いのちの記憶」について
本作の主題歌「いのちの記憶」は、二階堂和美さんが作詞・作曲・歌唱を担当しました。高畑勲監督との約2ヶ月半にわたるやり取りを経て完成した楽曲で、命のめぐりと記憶の尊さを優しく歌い上げています。映画の物語と深く結びついた歌詞は、エンドロールで流れると涙なしには聴けない名曲です。音楽は久石譲さんが担当し、繊細で美しいメロディーが作品の世界観を支えています。劇中では二階堂和美さんが歌う挿入歌「天女の歌」や「わらべ唄」も使用されており、物語の要所で流れるこれらの楽曲が感動を一層深めています。
『かぐや姫の物語』のアニメーション技法
本作の最大の特徴の一つが、従来のセルアニメーションとは全く異なる水彩画のような独特のアニメーション技法です。輪郭線を鉛筆の風合いで残し、色彩を水彩絵の具で塗ったかのような柔らかなタッチは、日本画や絵巻物を彷彿とさせます。高畑監督は「余白」を大切にする日本画の美学をアニメーションに取り入れることにこだわり、背景を描き込みすぎず、あえて白い空間を残すことで観客の想像力を喚起する演出を行いました。この手法はコンピューターによる自動処理が難しく、一枚一枚手作業で仕上げる必要があったため、制作に8年もの歳月がかかった要因の一つとなっています。作画監督の小西賢一さんをはじめとするスタッフの献身的な努力があってこそ実現した映像であり、その芸術的完成度は海外のアニメーション作家や評論家からも絶賛されました。フランスの映画批評サイトでは満点に近い評価を獲得し、アヌシー国際アニメーション映画祭でも上映されるなど、世界のアニメーション史においても重要な一作と位置づけられています。
『かぐや姫の物語』視聴方法
『かぐや姫の物語』を含むスタジオジブリ作品は、日本国内のサブスクリプション型の動画配信サービスでは配信されていません。視聴するにはDVDまたはBlu-rayの購入・レンタルをご利用ください。Blu-ray版では高精細な映像で水彩画タッチのアニメーションの繊細な色彩表現を堪能できるため、ぜひBlu-rayでの視聴をおすすめします。特に姫が宴席から逃げ出すシーンの荒々しい筆致は、高画質で観ることでその迫力が一層際立ちます。また、金曜ロードショーなどで不定期に地上波放送されることもありますので、放送スケジュールをチェックしてみるのもよいでしょう。
『かぐや姫の物語』あらすじまとめ
- 高畑勲監督が8年の歳月と約50億円の製作費をかけた遺作
- 日本最古の物語文学『竹取物語』を独自の解釈で映画化
- 水彩画タッチのアニメーション技法が従来の概念を覆した
- かぐや姫の声は朝倉あきが少女から大人まで演じ分けた
- 翁役の地井武男は収録中に急逝し三宅裕司が引き継いだ
- 宮本信子が媼の慈愛に満ちた母性を見事に表現した
- 山里での自由な暮らしと都での窮屈な生活の対比が鮮烈
- 5人の貴族と天皇の求婚をすべて退ける姫の強い意志が描かれた
- 捨丸との空を飛ぶシーンは映画オリジナルの感動的な名場面
- 月に帰るラストシーンの明るい音楽が逆に恐怖と悲しみを際立たせる
- 天の羽衣をまとった瞬間に記憶が消えるという衝撃的な演出
- 最後の涙は地上の記憶が完全には消えなかったことの証
- 主題歌は二階堂和美「いのちの記憶」で高畑監督と共に完成させた
- 第87回アカデミー賞長編アニメーション映画賞にノミネートされた
- 水彩画タッチのアニメーション技法は8年の制作期間を要した大きな要因
- 挿入歌「天女の歌」「わらべ唄」も二階堂和美が歌唱し物語を彩る
- 配給は東宝で2013年の邦画興行ランキング上位を記録した
- 海外の映画批評でも高い評価を得ておりフランスでは満点に近いスコアを獲得
- アヌシー国際アニメーション映画祭でも上映され世界的に注目された
- 作画監督の小西賢一をはじめスタッフの献身的な努力が映像の完成度を支えた
- 「生きるとは何か」を問いかける普遍的なメッセージが作品に込められている
映画『かぐや姫の物語』は、高畑勲監督が全身全霊を注いで完成させた至高のアニメーション映画です。美しい映像と音楽、そして命の意味を問いかける深い物語は、観る者の心に長く残り続けます。日本最古の物語文学に新たな命を吹き込んだ本作は、スタジオジブリの作品群の中でも唯一無二の輝きを放つ傑作です。子どもから大人まで、観るたびに異なる感動を与えてくれるこの作品を、まだご覧になっていない方はぜひDVDやBlu-rayで堪能してみてください。高畑監督が最後に遺したメッセージは、きっとあなたの心にも深く響くことでしょう。
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