
2025年の幕開けを飾ったTBS新春スペシャルドラマ『スロウトレイン』。脚本家・野木亜紀子と主演・松たか子をはじめとする豪華キャスト陣が集結し、放送前から大きな注目を集めました。物語の舞台は、歴史と現代が交差する鎌倉と、海を越えた韓国・釜山。変わりゆく時代の中で、誰もが抱える人生の選択と普遍的な「家族」の在り方を丁寧に描き出し、多くの視聴者の心に深い余韻を残しました。
本記事では、この話題作『スロウトレイン』の魅力を余すところなくお伝えするため、キャストや相関図、あらすじといった基本情報から、物語を深く味わうための見どころ、視聴者の感想、そして気になる結末の考察まで、徹底的に解説していきます。この1本で『スロウトレイン』のすべてがわかる、決定版ガイドです。
記事のポイント
- 脚本・野木亜紀子と主演・松たか子が送る新時代のホームドラマ
- 多部未華子、松坂桃李、星野源、チュ・ジョンヒョクなど豪華キャストが集結
- 鎌倉に住む3姉弟の「それぞれの幸せ」への道のりを描く物語
- 物語の舞台は日本の鎌倉から韓国の釜山へ展開
- 変わりゆく時代における普遍的な「家族」の形を問う作品
【ドラマ】『スロウトレイン』キャスト・相関図とあらすじ

チェックポイント
- 松たか子、多部未華子、松坂桃李が演じる3姉弟のリアルな空気感
- 星野源、チュ・ジョンヒョクが物語に新たな風を吹き込む
- 鎌倉と釜山を舞台に展開される、心温まるヒューマンドラマ
- 野木亜紀子脚本ならではの、示唆に富んだセリフの数々
- 複雑なようでいて温かい、渋谷家の人物相関図
ドラマ『スロウトレイン』の基本情報(放送日・脚本・演出)
『スロウトレイン』は、2025年1月2日のよる9時からTBS系列で放送された新春スペシャルドラマです。単発ドラマでありながら、連続ドラマに引けを取らない重厚な世界観と丁寧な人物描写で、視聴者を魅了しました。
この作品最大の注目点は、何と言ってもその制作陣にあります。脚本を手掛けたのは、『アンナチュラル』『MIU404』、そして映画『罪の声』『ラストマイル』など、数々のヒット作を生み出してきた現代日本を代表する脚本家・野木亜紀子。社会問題への鋭い視点と、魅力的なキャラクター造形、そして心に響くセリフ回しで高い評価を得る彼女が、本作では「家族」という普遍的なテーマに挑みました。本作は、野木氏による完全オリジナル脚本作品です。
演出は、映画『花束みたいな恋をした』やドラマ『カルテット』などで知られる土井裕泰が担当。『空飛ぶ広報室』『逃げるは恥だが役に立つ』『重版出来!』など、これまでも野木脚本の原作ものを手掛けてきた土井監督ですが、オリジナル脚本でタッグを組むのは本作が初となります。繊細な感情の機微を捉える映像美と、役者の魅力を最大限に引き出す演出力には定評があり、本作でもその手腕がいかんなく発揮されています。
主要キャスト一覧と登場人物紹介
本作の魅力を語る上で欠かせないのが、実力と人気を兼ね備えた豪華なキャスト陣です。それぞれが複雑な背景と想いを抱えるキャラクターに息を吹き込み、物語に深い奥行きを与えています。
渋谷 葉子(しぶや ようこ) – 演:松たか子
物語の主人公であり、渋谷家の長女。フリーの編集者として働くキャリアウーマンですが、結婚はしておらず、鎌倉の実家で暮らしています。交通事故で両親と祖母を一度に亡くして以来、家長として妹と弟を支えてきたしっかり者。しかし、その内には誰にも見せない葛藤や寂しさを抱えています。
渋谷 都子(しぶや みやこ) – 演:多部未華子
渋谷家の次女。30歳を過ぎても定職に就かず、ふらふらと自由奔放に生きているように見えます。物語の冒頭、法事の帰りに突然「韓国に行く!」と宣言し、葉子と潮を驚かせます。彼女のこの決断が、止まっていたかのように見えた渋谷家の時間を大きく動かすきっかけとなります。
渋谷 潮(しぶや うしお) – 演:松坂桃李
渋谷家の末っ子で長男。江ノ島電鉄の新人保線員として真面目に働いています。姉たちに代わって渋谷家の家事全般をこなし、温厚で心優しい青年。しかし、彼にもまた、恋人の存在など、姉たちに打ち明けられていない秘密があります。
百目鬼 見(どめき けん) – 演:星野源
葉子が担当する人気作家。才能はあるものの、少々面倒な性格で葉子を振り回すこともしばしば。葉子とは仕事上のパートナーとして長年の付き合いがあり、彼女の良き理解者でもあるような、そうでないような、絶妙な距離感の関係です。
オ・ユンス – 演:チュ・ジョンヒョク
韓国・釜山で飲食関連の投資会社に勤務する青年。韓国へ渡った都子と出会い、彼女の人生に大きな影響を与えることになります。大ヒット韓国ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』で日本でも人気を博したチュ・ジョンヒョクが、本作で日本ドラマ初出演を果たし、流暢な日本語も披露して話題となりました。
渋谷家3姉弟の相関図と関係性
物語の中心となるのは、鎌倉の古い一軒家で暮らす渋谷家の3姉弟です。
長女・葉子は、早くに親を亡くしたことから「自分がしっかりしなければ」という責任感を背負い、家長として振る舞ってきました。その一方で、編集者という仕事に情熱を注ぎますが、プライベートではどこか満たされない思いを抱えています。
次女・都子は、そんな姉の姿を見てきたからか、一つの場所に縛られることを嫌い、自由を求める奔放な性格。しかし、その行動の裏には、自分自身の生き方への模索と、家族への複雑な思いが隠されています。
長男・潮は、2人の姉の間でバランサーのような役割を果たす心優しい青年。家事をこなし、姉たちを気遣う一方で、自身の人生や恋愛については多くを語らず、内に秘めた思いを抱えています。
彼らは、両親と祖母を一度に亡くすという共通の辛い過去を持ち、その経験が3人を強く結びつけています。普段はそれぞれが自立した大人として生活していますが、心の奥底では互いを深く思いやり、支え合っているのです。物語は、都子の「韓国に行く」という一言をきっかけに、これまで保たれてきた3人の絶妙なバランスが変化し、「3人での幸せ」から「それぞれの幸せ」へと向き合っていく過程を丁寧に描いていきます。
ドラマ『スロウトレイン』のあらすじをネタバレなしで紹介
鎌倉に住む渋谷家の長女・葉子(松たか子)、次女・都子(多部未華子)、長男・潮(松坂桃李)。彼らは若い頃に交通事故で両親と祖母を一度に亡くし、以来3人で支え合って生きてきました。
月日は流れ、両親たちの二十三回忌の法事を終えた帰り道。30歳を過ぎても定職に就かず、自由気ままに生きてきた都子が、突然「韓国に行く!」と宣言します。このあまりに唐突な告白は、葉子と潮を大いに戸惑わせるのでした。
都子の決断をきっかけに、これまで安定しているように見えた3姉弟の日常に、少しずつ変化の波が訪れます。葉子は担当作家である百目鬼(星野源)との関係や自身のキャリアについて思いを巡らせ、潮は恋人の存在を姉たちに言えないまま、自らの将来と向き合います。
そして物語の舞台は、海を越えて韓国・釜山へ。都子は釜山で青年ユンス(チュ・ジョンヒョク)と出会い、新たな人生の一歩を踏み出そうとします。
それぞれの道を選び始めた妹と弟を、葉子はどのような思いで見守るのか。ゆっくりと、しかし着実に進んでいく人生という名の列車「スロウトレイン」。3姉弟がたどり着く、新しい「幸せ」の形とは――。これは、変わりゆく時代の中でも普遍的に在り続ける「家族」の姿を通して、見る人の心に温かな感動を届ける、新時代のホームドラマです。
星野源が演じる人気作家・百目鬼の役どころ
音楽家、俳優、文筆家として多彩な才能を発揮する星野源が本作で演じるのは、松たか子演じる葉子が担当する人気作家・百目鬼見(どめきけん)。
百目鬼は、売れっ子ならではのこだわりと気難しさを持ち合わせ、葉子をプロフェッショナルな編集者として信頼しつつも、時に無理難題を言って困らせる人物です。しかし、その言動の端々からは、葉子の本質を見抜いているかのような鋭さが垣間見えます。
彼は単なる「仕事相手」という枠には収まらず、葉子の人生における重要な触媒の役割を果たします。弟や妹にも言えない本音や弱音を、なぜか百目鬼の前では少しだけ見せてしまう葉子。2人の間で交わされる、ユーモラスでありながら核心を突く会話劇は、本作の見どころの一つです。野木亜紀子脚本作品の常連でもある星野源が、その独特の存在感で物語にスパイスを加えています。
チュ・ジョンヒョク演じる韓国人青年ユンスの役割
日本でも社会現象を巻き起こした韓国ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』の“クォン・ミノ弁護士”役でブレイクした俳優チュ・ジョンヒョクが、本作で待望の日本ドラマ初出演を果たしました。
彼が演じるオ・ユンスは、釜山で飲食関連の投資会社に勤める、誠実で心優しい韓国人青年です。日本から単身渡ってきた都子と出会い、彼女が新しい環境で奮闘するのを温かくサポートします。彼の存在は、異国の地で心細さを感じていた都子にとって大きな支えとなり、2人の間には次第に特別な感情が芽生えていきます。
物語が鎌倉から釜山へと大きく展開する上で、ユンスはキーパーソンとなる重要な役どころ。チュ・ジョンヒョクは、撮影の約1ヶ月前から日本語の猛特訓を受け、劇中では非常に流暢な日本語のセリフを披露。その真摯な役作りと、国境を越えて人と人とが心を通わせる姿を体現した繊細な演技は、多くの視聴者に感動を与えました。
脇を固める実力派俳優陣(井浦新、リリー・フランキーほか)
主演の5人に加え、物語に深みと彩りを与える実力派俳優陣の存在も『スロウトレイン』の大きな魅力です。
葉子の過去に深く関わる男・目黒時生役に井浦新、人気作家の百目鬼に嫉妬心を抱く文壇の重鎮作家・二階堂克己役にリリー・フランキーが出演。短い登場シーンながらも、その確かな演技力で強烈な印象を残します。
さらに、葉子の元職場の後輩・矢作カンナ役を松本穂香が演じるほか、池谷のぶえ、倉悠貴、古舘寛治、宇野祥平、飯塚悟志(東京03)、菅原大吉、中村優子といった、日本のドラマや映画に欠かせない個性豊かな面々が顔を揃え、物語の世界をよりリアルで豊かなものにしています。
脚本・野木亜紀子と演出・土井裕泰の黄金タッグ
前述の通り、本作は脚本・野木亜紀子と演出・土井裕泰という、現代の日本の映像界を牽引する2人のクリエイターによるタッグが実現した点でも特筆すべき作品です。
これまで『逃げるは恥だが役に立つ』や『重版出来!』など、数々の原作付きドラマを共に作り上げてきた2人ですが、野木氏のオリジナル脚本に土井監督が演出を手掛けるのは、意外にも本作が初めて。長年にわたって培われてきた互いへの信頼関係が、オリジナル作品という新たな挑戦の場で、見事な化学反応を生み出しました。
野木脚本の真骨頂である、何気ない日常の会話の中に人生の真理を忍ばせる巧妙なセリフ回し。そして、土井監督の、登場人物たちの息遣いや心の揺れ動きを丁寧に掬い取る映像表現。大きな事件が起こるわけではない、静かな物語の中に、観る者の心を掴んで離さない確かな引力が生まれているのは、まさにこの黄金タッグのなせる技と言えるでしょう。
音楽・長岡亮介が奏でるドラマの世界観
ドラマの空気感を決定づける上で重要な役割を担う音楽を担当したのは、バンド「ペトロールズ」のフロントマンであり、椎名林檎率いる「東京事変」のギタリスト“浮雲”としても知られるミュージシャン・長岡亮介。
彼の作り出す音楽は、スタイリッシュでありながらどこか温かみがあり、鎌倉と釜山という2つの街の風景に溶け込みながら、登場人物たちの心情にそっと寄り添います。派手な劇伴で感情を煽るのではなく、物語の余白を豊かにするような、洗練されたサウンドデザインが印象的です。特に、江ノ電が走るシーンや、釜山の海辺の風景に重なる音楽は、観る者を一瞬で『スロウトレイン』の世界へと誘います。
ロケ地となった鎌倉と釜山の魅力
本作は、物語の主要な舞台となるロケ地の魅力も大きな見どころです。
物語前半の中心となるのは、神奈川県の鎌倉。特に、潮が保線員として働く江ノ島電鉄(江ノ電)は、3姉弟の人生のメタファーとしても象徴的に描かれます。ゆっくりと、時に揺れながらも、人々を目的地へと運ぶ電車の姿は、彼らの人生そのもの。極楽寺駅周辺や稲村ガ崎など、風光明媚な鎌倉の街並みが、ドラマにノスタルジックで穏やかな雰囲気を与えています。
そして、物語のもう一つの舞台が、韓国第二の都市・釜山。都子がユンスと出会い、新生活を始めるこの街は、活気に満ちながらも、どこか懐かしい風景が残る場所です。海雲台(ヘウンデ)の美しいビーチや、海岸沿いを走る「海雲台ブルーラインパーク」の海辺列車は、鎌倉の江ノ電の風景とも呼応し、2つの国の、2つの街が、物語の中で見事に繋がっていきます。これらのロケ地の選定にも、制作陣のこだわりが感じられます。
【ドラマ】『スロウトレイン』キャスト・相関図とあらすじを理解したら

チェックポイント
- 大きな事件は起こらない、けれど心に深く染みる日常のドラマ
- 「家族とは何か」「幸せとは何か」を問いかける物語のテーマ性
- TVerでの見逃し配信は終了、再放送やソフト化が待たれる
- 野木亜紀子作品ファン必見の、細部にまで張り巡らされた伏線とテーマ
- 観る人によって解釈が広がる、示唆に富んだラストシーン
物語の見どころと注目ポイントを解説
『スロウトレイン』の最大の見どころは、派手な事件や劇的な展開に頼ることなく、登場人物たちの心の機微や関係性の変化を丹念に描くことで、観る者の心を深く揺さぶる点にあります。
一つ目の注目ポイントは、3姉弟が織りなすリアルな空気感です。松たか子、多部未華子、松坂桃李という実力派俳優3人が演じる渋谷家の日常は、まるで本当の姉弟の会話を覗き見しているかのような自然さに満ちています。互いを思いやるがゆえの衝突や、言葉にしなくても伝わる愛情が、巧みな演技と脚本によって見事に表現されています。
二つ目は、野木亜紀子脚本ならではの珠玉のセリフです。例えば、葉子が百目鬼に「人生は短いんだから、やりたいことやった方がいいよ」と諭されながらも、簡単には一歩を踏み出せない姿や、潮が姉たちに「2人が幸せならそれでいい」と語る場面など、登場人物たちのセリフ一つひとつに、人生の本質を突くような深みがあります。
三つ目は、鎌倉と釜山という2つの舞台の対比と共鳴です。古都・鎌倉の持つ穏やかでノスタルジックな雰囲気と、港町・釜山の持つ開放的でエネルギッシュな空気。異なる魅力を持つ2つの街を舞台にすることで、物語に広がりと奥行きが生まれています。特に、江ノ電と釜山の海辺列車が、それぞれの場所で人々の人生を乗せて走る姿は、本作のテーマを象徴する美しいシーンとなっています。
視聴者の感想・評価とSNSでの反響
放送直後から、SNS上には視聴者からの絶賛の声が溢れました。特に多く見られたのが、**「心にじんわりと沁みる、お正月にぴったりのドラマ」「派手さはないけれど、ずっと見ていたくなる」「セリフの一つひとつが宝物みたい」**といった、物語の丁寧な作りに言及する感想です。
また、**「松たか子、多部未華子、松坂桃李の3姉弟が本当に最高」「星野源の演じる百目鬼先生が憎めなくて魅力的」「チュ・ジョンヒョクの日本語がすごい、そして優しい演技に泣いた」**など、俳優陣のアンサンブルを称賛する声も多数寄せられました。
さらに、**「野木亜紀子脚本はやっぱり裏切らない」「大きな事件が起きなくても、こんなに面白いドラマが作れるのか」「家族っていいなと、素直に思えた」**のように、脚本の素晴らしさや、ドラマが描く新しい家族観に共感する意見も目立ちました。
全体として、刺激的な展開を求めるのではなく、上質で心温まる人間ドラマを欲していた視聴者の心に深く刺さったことが、高い評価に繋がったと言えるでしょう。
動画配信サービスでの視聴方法(TVer・TBS FREE)
『スロウトレイン』は放送後、期間限定で民放公式テレビ配信サービス「TVer(ティーバー)」および「TBS FREE」にて無料見逃し配信が行われましたが、残念ながら現在は配信期間を終了しています。
そのため、2025年10月現在、本作を視聴できる定額制の動画配信サービス(Netflix、Hulu、Amazonプライム・ビデオなど)は存在しない状況です。今後の再放送や、各動画配信サービスでの配信開始を待つ必要があります。最新の情報については、公式サイトなどを随時ご確認ください。
DVD・Blu-rayの発売情報と特典内容
ドラマを繰り返し楽しみたいファンにとって朗報なのが、DVDおよびBlu-rayの発売決定です。『スロウトレイン』のDVDとBlu-rayは、2025年5月30日に発売されました。
特典映像として、制作発表会見の様子や、撮影の裏側に迫るメイキング(オールアップ集)、スポット集などが収録されることが発表されており、作品の世界をより深く知ることができる内容となっています。また、封入特典としてブックレットも付く予定です。
これらのパッケージソフトは、本編を何度も見返したい方はもちろん、豪華キャスト陣の素顔や、作品が作られていく過程に興味がある方にとっても、必見のアイテムと言えるでしょう。
野木亜紀子脚本作品のファンが見るべきポイント
『アンナチュラル』での法医学、『MIU404』での機動捜査隊など、専門的な職業を通して現代社会を切り取ってきた野木亜紀子。そんな彼女が、本作では「ホームドラマ」というジャンルに正面から向き合いました。
野木作品のファンにとっての見どころは、やはりそのテーマ性にあります。本作では、「家族」という最小単位のコミュニティを通して、個人の自立と共存、多様な幸せの形の肯定といった、彼女が一貫して描き続けてきたテーマが、よりパーソナルな物語として昇華されています。
また、細部に張り巡らされた伏線や、象徴的な小道具の使い方も健在です。例えば、3姉弟が囲む食卓のメニューや、葉子が編集する本のタイトル、江ノ電の走行シーンなど、何気ない描写の一つひとつに、登場人物の心情や物語の行く末を暗示するヒントが隠されています。一度見ただけでは気づかないような、細やかな仕掛けを発見するのも、野木作品ならではの楽しみ方と言えるでしょう。
劇中に登場する象徴的なセリフやシーン
本作には、視聴者の心に深く刻まれる象徴的なセリフやシーンが数多く存在します。
「人生はスロウトレイン。急行も特急もない。各駅停車で、時に止まったり、後戻りしたりしながら進んでいく」
このドラマのテーマを象徴するセリフは、直接的には語られませんが、物語全体を通して流れるメッセージとなっています。焦らず、自分のペースで人生を歩んでいくことの尊さを教えてくれます。
都子の「私、韓国に行く!」
物語の全てが動き出すきっかけとなった一言。それは単なる思いつきではなく、彼女が自分自身の人生を生きるための、勇気ある第一歩でした。このセリフをきっかけに、葉子も潮も、そして都子自身も、新たな景色を見ることになります。
鎌倉の踏切と釜山の踏切
潮が働く江ノ電の踏切と、都子が釜山で渡る海辺列車の踏切。物理的には遠く離れた場所にある2つの踏切が、映像の中でシンクロするように描かれるシーンは、離れていても姉弟の心は繋がっていることを象徴しており、非常に印象的です。
これらのシーンは、登場人物たちの感情の機微を雄弁に物語っており、ドラマの余韻をより一層深いものにしています。
最終回・結末のネタバレ考察
『スロウトレイン』は、観る人それぞれに解釈の余地を残す、非常に穏やかで希望に満ちた結末を迎えます。
韓国での挑戦を決めた都子は、ユンスとの関係を育みながら、釜山で自分のお店を開くという夢を実現させます。彼女は「家族」という枠組みから物理的に離れることで、初めて自分自身の足で立つことの喜びを見出しました。
潮は、これまで言えなかった恋人の存在を姉たちに打ち明け、結婚という新たなステージへ進むことを決意します。家事全般をこなし、姉たちを支える存在だった彼が、自身の家庭を築くという選択をしたことは、彼の大きな成長を物語っています。
そして、葉子。妹と弟がそれぞれの幸せを見つけて家を出て行った後、彼女は一人、鎌倉の家で暮らし続けます。一見すると「取り残された」かのように見えるかもしれませんが、彼女の表情は晴れやかです。彼女は、百目鬼とのつかず離れずの関係を続けながらも、誰かに依存するのではなく、一人の人間として自立した人生を歩んでいくことを選びました。それは、孤独な選択ではなく、自分自身の幸せを自分で見つけるという、最も強く、そして自由な生き方です。
最終的に、渋谷家の3姉弟は、物理的には離れ離れになります。しかし、彼らの絆が失われたわけではありません。むしろ、「3人で一緒にいること」だけが幸せの形ではないと知った彼らは、以前よりもっと強く、そしてしなやかな絆で結ばれることになったのです。『スロウトレイン』は、血の繋がりや同居といった形に縛られない、新しい時代の「家族」の在り方を、優しく提示してくれたと言えるでしょう。
【ドラマ】『スロウトレイン』キャスト・相関図とあらすじのまとめ
- 『スロウトレイン』は2025年1月2日放送のTBS新春スペシャルドラマ
- 脚本は『アンナチュラル』『MIU404』の野木亜紀子
- 主演の松たか子をはじめ、多部未華子、松坂桃李が3姉弟を演じる
- 共演には星野源、チュ・ジョンヒョク、井浦新など豪華な顔ぶれが揃う
- 物語は鎌倉で暮らす3姉弟がそれぞれの人生の分岐点を迎えるところから始まる
- 次女・都子の「韓国に行く」宣言が物語の大きな転機となる
- 普遍的な家族の姿を通して、痛快で心温まるストーリーが展開される
- 日本の鎌倉と韓国の釜山、2つの都市を舞台に物語が進行する
- 演出は映画『花束みたいな恋をした』の土井裕泰が担当
- 音楽は長岡亮介が手掛け、作品の世界観を彩る
- 人気作家役の星野源と、韓国人青年役のチュ・ジョンヒョクの役どころにも注目
- TVerやTBS FREEで見逃し配信が実施された(現在は終了)
- 視聴者からはキャストの演技や脚本の素晴らしさを絶賛する声が多数上がっている
- DVDとBlu-rayは2025年5月30日に発売された
- 新時代における新しいホームドラマとして高い評価を得ている作品
- 大きな事件に頼らず、日常の機微を丁寧に描くことで感動を生み出す
- 「個人の自立」と「家族の絆」という普遍的なテーマを扱っている
- 象徴的なセリフやシーンが多く、繰り返し見返すことで新たな発見がある
- 結末は、多様な幸せの形を肯定する、希望に満ちたものとなっている
- 野木亜紀子ファン、上質なヒューマンドラマを求める全ての人におすすめの一作
変わりゆく時代の中で、私たちはつい、目に見える幸せの形を求めてしまいがちです。しかし、本当の幸せは、もっとささやかで、パーソナルなものなのかもしれません。『スロウトレイン』は、そんな当たり前の、しかし忘れがちな大切なことに気づかせてくれる、宝物のようなドラマです。まだご覧になっていない方は、ぜひDVDやBlu-rayで、この温かな物語に触れてみてください。
参照元URL
- 新春スペシャルドラマ『スロウトレイン』|TBSテレビ: https://www.tbs.co.jp/slowtrain/
- スロウトレイン - Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/スロウトレイン
- 『スロウトレイン』Blu-ray & DVD 特設サイト: https://www.tc-ent.co.jp/products/detail/TCBD-1751